メインの支持者は「逃げ切り世代の富裕層」の立憲と共産
3つ目は左派政党群についてです。アメリカ民主党における「オバマ=ヒラリー路線」が大破綻に至ったように、人権や多様性を中心としたイデオロギーを掲げるものの、主要なマーケットは富裕層だという「21世紀初頭型のリベラル運動」というのは、完全に時代遅れになっています。
にもかかわらず、立憲も共産もそうですが、ご本人たちは「大企業や富裕層は批判する」という立場だというセルフイメージを持っていても、実際のところはメインの支持層は過去世代、イコール逃げ切り世代の富裕層になっています。共産党などは「違う」と強弁するでしょうが、実態は新聞代や党費を払える層が中心というだけで、現代ではやはり「持てる層、逃げ切れる層」の党ということになると思います。
問題は、左派思想というのは本質的な問題として、「持たざる層」つまり経済的に不安定な層の利害を代表して正義にしないと、成立しないということです。アメリカの場合は、それでも「最貧困層には再分配をする」という姿勢はありました。それでも中の下など「取られるだけの層」がイデオロギー的に中道左派を憎悪するようになると、ビジネスモデルの全体が崩れてしまったのです。
そう考えると、最貧困層への再分配ということでは、立憲も共産も全くもって冷淡です。そもそもが教育水準が高く、従って富裕層であるが「戦後的な正義」にこだわる層が、立憲のコア支持者です。共産の場合はカネを出して組織を支えると見返りがあるという互助組織に近いわけで、どちらも最貧困層への強い再分配を志向していません。それどころか、世代的な限界が大きく、現在の若年層の社会苦への理解も薄いようです。
共産の場合は、党首が交代したことで「共産党が政権を取ったとして、すぐには資本主義を停止しません」などとバカ正直な「理念の解説」を始めています。どうやら本気で21世紀の今日に、世界中で失敗した計画経済を「すぐにではないが、後で」やるらしいので、基本は通常の有権者は「ドン引き」になると思いますから、基本的には論外の存在だと思います。
問題は立憲です。とにかく政権担当をしていた時代から、政策のセンスが全く地に足がついていません。有期契約の労働者を救おうとして無期(終身雇用)転換の制度を作ったら、結局は派遣切りが横行するだけといった感じで、とにかく「現場の声と利害を代弁」できていません。
そんな中では、左派政党の潜在支持票の行き場は「れいわ」ぐらいしかないわけです。ですが、「れいわ」の政策パッケージが現実と重ならないのは、参政党と同じです。失われた昭和のストーリーを亡霊のように復活させたいというファンタジーの描き方もソックリです。何しろ、経済政策の最初に書かれているのが、中小企業の数を減らさないというのですからドン引きです。
中小企業が多いのは、オーナーがチマチマした搾取をやり、労働者は劣悪な条件で働かされ、結果として薄利多売の競争力があるという絶望的な構図があるからです。自動車産業で言えば、エンジン組み立てという複雑な工程は中国の生産性に取られてしまっています。結果的に残っているのが鋳型とかネジといった低付加価値産業だけで、それは日本がアジア諸国より生産性がいい、つまりは労働者が不当に搾取されているからです。
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