なぜ読売新聞は“世紀の大誤報”を連発したのか?元全国紙社会部記者が暴露する「業界の悪しき伝統文化」

 

読売のもう一つの誤報「石破首相 退陣へ」のリーク元

ところで、読売新聞にはもう一つの“誤報”がある。「石破首相 退陣へ」との見出しをつけて配った7月23日の号外だ。「今月中にも退陣表明」と書いていたが、石破首相は即座にそれを否定し、9月に入った今も「続投」姿勢を続けている。

いわゆる「新聞辞令」というものだろう。首相周辺の誰かが既成事実化をはかるためにリークしたと考えるのが一般的だ。もちろん、実現すればスクープ、実現しなければ誤報となる。その危険を冒してまで他社を出し抜きたいというのは、一般市民にはとうてい理解しがたいことではないか。

読売新聞だけの問題ではない。どこも真似のできない視点や洞察、分析力を持った記事を書くこと。それが本物のスクープとわかっていてもできないのは、コストや時間がかかるし人材も限られているからだ。いきおい、安上りで時間も短縮できる役所や捜査機関の情報に頼らざるを得ない。新聞各社に共通する構造的な問題だ。

ネットによる情報収集が主流になってきた時代にあって、新聞が生き残りをはかるのは至難の業といえる。今回のような“大誤報”を出した発行部数日本一の新聞が、担当記者らの「不十分な取材」によるものとしてのみ片づけ、問題についての本質的な思考を怠るようなら、もはや絶望的というほかない。

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