トランプを都合よく利用するプーチンとネタニヤフ。曖昧な姿勢で「無力な市民の殺害」に手を貸す“堕ちた国アメリカ”

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「親イスラエル」の立場を崩すことなく、通算1万回目の節目を迎えた9月18日の国連安保理の会合でも「ガザでの即時かつ無条件の恒久的停戦」を求める決議案に拒否権を行使し、否決に追い込んだアメリカ。まさに世界はトランプ大統領に振り回される事態となっていますが、国際社会はどのような対応を取るべきなのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、最新の中東情勢やウクライナ紛争の状況と、関係各国の動きを解説。さらに欧州やアラブ諸国のみならず、日本にも求められる「姿勢」について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:見捨てられた一般市民-ガザとウクライナの惨状が映し出す国際政治の無力感

煮えきらぬトランプが破壊する世界。ガザとウクライナの惨状が映し出す国際政治の無力感

「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃がジェノサイド(大量虐殺)にあたる」

これは国連人権理事会の独立調査委員会(COI)が9月16日に示した見解です。

COIによると、ジェノサイド条約が定める5つの大量殺戮行為のうち、【殺害】【身体・精神に重大な危害を加えること】【身体的な破壊をもたらすような生活条件に追い込むこと】そして【出生防止措置の実施】の4つの行為が当てはまるという判断が下されました。

唯一、グレイゾーンとされたのは、5つ目の【子供の強制移住】という要件ですが、これも、アメリカのトランプ大統領が示した「アメリカによるガザ地区の所有と住民の周辺国への移住」が実行に移されてしまうと、確実に要件をすべて満たすことになります。

そもそもジェノサイドという定義は第2次世界大戦中にナチスドイツがユダヤ民族に対して行ったホロコーストを機に1948年につくられたものですが、今、ホロコーストを経てイスラエル建国に至ったユダヤ人(イスラエル人)が、二度と繰り返されてはならないと誓ったはずのジェノサイドを実施する側に回っているのは、非常に矛盾していると言わざるを得ません。

当のイスラエル政府はもちろん、COIによる報告書に対して「情報操作だ。ハマスの陰謀に国際社会が踊らされている」と激しい非難を行っていますが、報告内容を受けて、国際社会の対イスラエル包囲網は広がりを見せています。

ついに欧州各国も、欧州委員会が対イスラエル制裁の発動の必要性に言及し始め、日本もイスラエルによるガザ地区への攻撃とハマス壊滅に向けた作戦の強化に対して激しく非難する姿勢に出ました。

来週から始まる第80回国連総会を前に、イスラエルへの圧力と強いメッセージとして【パレスチナ国家の承認】の波が欧州各国に広がっています。

すでにフランス、英国、スペインなどがリストに名を連ねていますが、ここにきてルクセンブルグも輪に加わり、G7ではカナダ、先進国グループではオーストラリアとニュージーランドがその輪に加わっています。

パレスチナ国家の承認そのものはすでに広く行われているため驚きではないにせよ、G7や先進国はこれまで2国家解決が成立した場合に承認するとしていた外交上のカードをあえて切って、イスラエルの止まらない蛮行に対する抗議を示しています。

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