トランプを都合よく利用するプーチンとネタニヤフ。曖昧な姿勢で「無力な市民の殺害」に手を貸す“堕ちた国アメリカ”

 

イスラエルによるガザでの蛮行を後押ししたアメリカ

今後、欧州でホロコーストへの贖罪から親イスラエルとされるドイツ政府がどのような態度をとるかによって欧州のイスラエル離れが加速するかどうかが見えてきますが、すでに外務大臣がイスラエルのガザ攻撃を「許しがたい人権侵害と凶行」と激しく非難しているため、メルツ政権が欧州の輪に加わるのも時間の問題ではないかと考えます(ただし、その議論がドイツ国内で行われている際に、ベルリンで再建されたシナゴーグの開所式にメルツ首相自らがキッパー(ユダヤ教の帽子)を被って参加したことで、ドイツが抱えるどっちつかずな態度、または政治的な苦悩が感じられるように思うのは私だけでしょうか?)。

ただ今回の惨劇を加速させているのは、トランプ政権はもちろん、バイデン政権から続くアメリカの対外非干渉主義と、国内政治への過剰な配慮(対ユダヤ人コミュニティとキリスト教福音派)からくる偏った姿勢とダブルスタンダードの存在だと考えます。

「ビビ(ネタニエフ首相の愛称)は私の言うことを聞く」「ネタニエフ首相とは特別な関係が築かれており、きっと“正しい”判断をすると信じている」という、行き過ぎた親イスラエル姿勢を取るトランプ大統領と、「ネタニエフ首相は酷いやつだ」と公に言い放ち、イスラエルとの距離をとることを決めたにもかかわらず、イスラエルによるガザ地区への侵攻を止めることはせず、イスラエルへの武器供与もあらゆる形で続けたバイデン政権の曖昧姿勢は、イスラエルのネタニエフ首相と連立を組む極右政党を勢いづかせ、そこに積年の“生存に対する恐怖”をベースにした苛烈な対パレスチナ攻撃を一気に進めさせる後押しをしてしまったと思われます。

結果として少なくとも6万5,000人の市民がガザで命を落とし、78%の建物が全壊・ほぼ損壊となり、街はまさに廃墟と化しています。

たまたまBBCのニュースで取り上げられた2023年10月7日朝のガザ地区の写真と、今週9月16日に始まったイスラエルによるガザ地区への本格的な侵攻時(大規模空爆の実施と戦車部隊の侵攻など)の写真の比較は、ガザ地区で行われている激しい殺戮と破壊の実情を物語っています。

これが本当にイスラエルの言う“ハマスによる虚構”なのかどうかの判断はお任せしますが、一般市民が殺害され、病院(不妊治療施設含む)や学校を含む“不可侵”とされる施設も徹底的に破壊されている状況は、まさに地獄絵図としか言えないと考えます。

先週にイスラエルによって引き起こされたドーハ(カタール)への攻撃後にイスラエルを訪れたルビオ国務長官は、ドーハへの攻撃への懸念を伝えることはしても、イスラエルを非難せず、またネタニエフ首相との会談後もイスラエルが計画するガザへの本格侵攻の実施(8月から綿密に準備されてきた)を止めるどころか、容認する姿勢を鮮明にしたため、イスラエル政府はそれをアメリカのゴーサインと受け取り(拡大解釈し)、一気に攻勢に出ているものと思われます。

イスラエルによるガザへの本格侵攻が実行されているのと並行し、カタールのドーハではアラブ連盟とイスラム協力機構が緊急会合を行っていましたが、各国ともにイスラエルに対しての憤慨が示され、対イスラエル関係を根本から見直すべきとの判断で一致したようです。

これまで発言を控えてきたサウジアラビア王国のモハメッド・ビン・サルマン(MBS)皇太子は「アラブなどによる断固たる非難と確固とした対応が必要」と発言し、攻撃を受けたカタールのムハンマド首相兼外相は、先日の国連安保理緊急会合に続き、「仲介者を攻撃する国を聞いたことがあるか?イスラエルの行為は常軌を逸していると言わざるを得ない」と怒り心頭でした。

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