トランプを都合よく利用するプーチンとネタニヤフ。曖昧な姿勢で「無力な市民の殺害」に手を貸す“堕ちた国アメリカ”

 

欧州がロシアの勢力圏になる兆しが見えてしまう恐れも

欧州もアラブ諸国も、そろそろトランプ頼みの国際安全保障体制・戦略を改め、自分の地域の問題は自ら解決・対応することを真剣に考えなくてはなりませんが、果たしてそのキャパシティー(軍備、資金力、国内での支持、外交力など)があるかどうかは非常に不安です。

トランプ大統領のアメリカは来年11月の連邦議会中間選挙を見据えて、国際問題よりも国内の問題に政策の軸足を移しており、外交・安全保障面であまり国外の案件に真剣に取り組むことはないと考えます。

トランプ大統領のノーベル平和賞に対する個人的なこだわりとオバマ大統領への対抗心もあって、各紛争の停戦や終結に尽力する姿をアピールしつづけるかとは思いますが、それらはあくまでもスタンスであり、中身の伴わないパフォーマンスに終わるのではないかと感じています。

潮目が変わることがあるとしたら、結果の良し悪しに関わらず、来年の中間選挙後かと思いますが、トランプ大統領の対外問題、特にウクライナとイスラエル絡みの中東問題に対する反応の方向性は、中間選挙で勝利するか敗北するかによって違ってきます。

勝利して盤石な権力基盤を議会内に築いた場合には、より積極的な対応が期待できるかもしれませんが、“負けた”場合には、自暴自棄に陥って何もしなくなるか(周りのせいにして)、かなり本格的な介入を強行するかという結果が待っていると思われます。正直なところ、実際にどのような対応になるかは、全く予測がつきません。

ただはっきりと分かっていることは、それまでは(来年11月までは)、ロシア・ウクライナ戦争も終わらず、イスラエルによる蛮行が続くことになるのではないかという恐れです。

ロシア・ウクライナ戦争については、もし来年11月までに大勢が決するような事態になれば――それは恐らくロシアの勝利と非常に一方的な停戦合意になると思われますが、ロシアの勢力が拡大し、バルト三国をはじめ、周辺にロシアの脅威が広がっていくことと、欧州各国がロシアとどう向き合うべきかを決定しなくてはならない事態に直面することを意味します。もしかしたら、欧州がロシアの勢力圏になる兆しが見えてしまうかもしれません(可能性はそう高くないと考えていますが)。

イスラエルを軸にした中東情勢については、アラブ諸国がイランやトルコ、中ロを巻き込んで対イスラエル勢力を結集し、イスラエルの暴走を止めるべく、イスラエルとの戦いに挑む事態になれば、中東地域は荒廃し、かつ、もしロシア・ウクライナ戦争が継続していた場合には、戦争がリンクし、その戦火が世界中に拡大するような事態が引き起こされることも危惧されます。

どのような事態になるかは予測がつきませんが、欧州各国や日本、アラブ諸国などにとって非常に重要なのは【トランプ頼みの対応からの脱却と、自前の対応能力の確立】だと考えます。

もしロシアが攻めてきたら、もしイスラエルが戦いを挑んできたらどうするか。

政治リーダーとしては、日本も欧州もアラブ諸国も皆、有事に対する備えが必要ですが、同時に、その過程で生まれ、かつ見逃され、見落とされる一般市民の犠牲の拡大に対していかに迅速に対応し、犠牲を生まないか最小化するためにはどうするかを考え、具現化し、いつでも実施できる体制を築いておくことが必要だと感じます。

来週から国連総会がスタートし、リーダーたちがニューヨークに集い、直接に協議することができる千載一遇の機会がやってきます。

混乱が渦巻く国際情勢の中で犠牲を強いられ、生命の危機に直面する一般市民、特に子供たちのために、ぜひ世界のリーダーたちには、確固たるリーダーシップと覚悟を示してもらえればと強く願います。

以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年9月19日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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