野菜を先に食べる程度で済むならそのほうがマシ
ちなみに、アルコールについては、ビールロング缶で1本飲めば20gだ。女性なら1本で、男性なら2本でやめておくのが、「個人の行動目標」だという。
「ゴー宣DOJO」の打ち上げで、乾杯してジョッキ2杯飲み干せば、もう「そんなに飲んでいる人間は国民の10%しかいませんよ!」と言われる時代を目指そうというわけである。コロナの際に、飲食店を社会の敵として扱う現象が起きたが、あれに似た感覚を常態化したいのだろうか。
不可解なのは、「睡眠で休養がとれている者の割合を80%に」だ。どうやって、休養がとれたかどうかをはかるのだろう。
サントリーの新浪剛史元会長が、時差ボケに対処するためとかで、大麻由来の成分を含むCBDサプリメントを輸入しようとして追及を受けていたが、あれも「睡眠で休養をとる」ための個人の行動に入るのだろうか。そもそも「休養」ってなんなのか。寝れば休養になるのか。
しかも紹介した目標はほんの一部で、他にも、がん検診の受診率をのばす、脳血管疾患での死亡率を減らす、高血圧を改善させる、LDLコレステロール値の高い者を減らす、メタボの者を減らす、しまいには、足腰の痛みのある高齢者を減らすなど、とにかく多岐にわたる。
国民全員にくまなく定期健診・歯科検診を受けさせて病院に管理させたいという思惑があるのだと思うが、その結果、測定された数値に対して、「こんな数値、国民の30%以下しかいない不健康さですよ」「休養がとれていませんよ」「果物を食べすぎです」「自覚が足りませんね。もっと行動を変えてください」など指導しようというのだろうか。
うざすぎる。野菜を先に食べる程度で済むなら、そのほうがマシだ。
私は昨年、生まれて初めて「人間ドック」を受けた。
親戚に、「軽い気持ちで検診を受けたら、初期のがん細胞が見つかった」という人がいて、それを聞いた母親が動揺して、何度も何度も電話やLINEをしてきて、検査を受けろとしつこく言われたからだ。
ところが、いざ検査を受けると、今度は「LDLコレステロール値がやや高い」という結果に対して、病院から週に1度のペースで、「再検査は受けないのか?」「次の検査はいつ頃の予定か?」と電話がかかってくるようになった。
これがまた、母親ばりにうるさくて、しまいには、スマホの着信画面に病院の電話番号が表示されているのを見ただけで、脳がこわばり、胸がギッと押されるような感覚をおぼえるようになった。明らかなストレス反応である。
これは健康を害していると判断したので、病院を着信拒否にしてしまった。私は、厚労省の設定した「個人の行動目標」を押し付けられたら、それが原因で、ストレス性の病気になる人間だと思う。
国も病院も「健康」を絶対正義と掲げて、容赦なく圧をかけようとするから、めんどくさい。「全員健康」を目指すなんて、人間として病んでいるのではないか?なにかヤバい思想と連結していかないか?
野菜ぐらいしっかり食べる。だから、放っておいてくれ。
(メルマガ『小林よしのりライジング』2025年9月23日号より一部抜粋・敬称略。続きはメルマガ登録の上お楽しみください)

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