崖っぷち高市「自民と維新で連立」仰天シナリオが否定できぬ理由。立憲+公明による“自民切り崩し”で「石破首班」のウルトラCも浮上

 

公明が連立離脱と選挙協力拒否に至った最も合理的な見方

ですが、その積極財政とバラマキというのは、一種のイデオロギーのようなものであり、右派のイデオロギー的言説が「その場のパフォーマンス」であるのと同時に、財政に関しても、そこまで真剣ではない、そう考えることができます。一方で、小泉の場合はより世代が若い分だけ、日本経済の低迷には危機感があり、財政を出動するということになれば、本当にやってしまう、麻生はそのような警戒感を持ったのかもしれません。

というわけで、恐らくは改革のスローダウンと、財政規律の維持という2つの「譲れない政策」ということで、麻生は高市を選んだのだと思います。では、公明としてはこれが気に入らなかったのかというと、そこは少々説明が必要に思います。

公明としては、今年の6月に石破政権と合意した経済財政政策の方針(いわゆる骨太2025)があります。「物価上昇を上回る賃上げ」「地方創生」「資産運用立国」「安心安全の確保」「全世代型福祉と少子化対策」の5本柱です。高市総裁になっても、この合意について守られるのであれば、公明としては「離婚届」を突きつけるところまでは思い詰めなかったと思います。

この中で可能性があるのが「全世代型福祉」というスローガンです。どういうことかというと、「高齢者ばかりではなく、現役世代のことも配慮する」、けれども「やっぱり高齢者にも配慮する」というのが、この「全世代」という言葉の意味なんだと思います。そして、その高齢者への配慮という点で、現在問題になっているのが医療費の3割負担問題です。

これは確証があって申し上げているのではありませんが、この3割負担については、見えないところで、大きな葛藤、いや暗闘を生んでいる可能性があります。現時点では、制度がどうなっているのかというと、

  • 70歳までは現役…………一律3割負担
  • 75歳までの前期高齢者…基本は2割負担、高額所得者は3割
  • 75歳以上の後期高齢者…低所得は1割、中所得は2割(※)、高所得は3割の負担

となっていますが、※の部分の2割負担については22年10月に1割から2割にアップ。但し、その際に一気にアップになる人は救済措置があったのですが、今回、この25年10月から救済措置が終わります。

高齢の引退世代を多く支持層に抱える公明の場合は、この問題は大きなテーマであると思います。公明党=創価学会というのは、60から70年代の経済成長の中で、企業組織票でも組合員ではないために帰属先のない集団を徹底的に掘り起こして組織化した集団です。その構成員は、大都市圏とその近郊の商店・自営業者と専業主婦という特殊な特性を持っていました。

つまり商店会とPTAという地盤をどんどん攻めて作り上げた組織と言っていいと思います。ですから、最初はカネがあり、けれども帰属先がない、特段の利害関係がないことから、世代の問題もあって理想主義と平和主義の党として活動していました。資金力についても俗に「財務」と言われた集金をやって潤沢な物があったようです。

ですが、21世紀に突入するにあたって、支持層の高齢化が顕著になったのです。端的に言って、どうして野党から与党に転じて政権に入ったのかというと、公明の場合は自分たちの主張を通すためではなく、自分たちの支持層の高齢化を受けて高齢者の権益を守るためであったと考えられます。であるならば、今回、連立離脱と選挙協力拒否という「思い詰め方」に至ったのは、その高齢者の権益、ズバリ後期高齢者医療費の問題があったと見るのが最も合理的です。

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