立憲+公明で自民を切り崩し「石破首班」という構図も
問題は、これだけ物価高への恨みというのが全国に吹き荒れている中で、維新と自民(=高市+麻生)が組んだ場合には、財政規律を意識することと、納税者の視点から「バラマキ」には消極的になるということです。そうなれば選挙には勝てる要素がありません。ですが、仮の話、大阪をかなり取って、他は安全運転と落選バネで何とかするということであれば、全く絶望的ではないと思います。
勿論、それでいいのかというと、維新には、右派ポピュリズムの「やり過ぎ」という前歴はかなりあり、相当に危なっかしい面はあると思います。ですが、夢洲のIRでガッポリ儲けて関西の経済を回すという政策からは、外国人排斥という話は絶対に出てこないわけで、この一点においても、参政と組む可能性は少ないと思います。
ということで、これから国会が召集される21日(火)までの動きとしては、自民党(高市+麻生)と維新の提携が成立するかどうかを、注意深く見守る必要を感じています。もしかしたら、少数与党でもいいのでこの組み合わせで本格連立を組むかもしれません。
仮にそうした動きが顕著になった場合、危機感を持つのは地方や官公労だと思います。いくら自民党が現実主義だといっても、財政が危機的な中で、日本式の「小さな政府論」の本家ともいうべき維新が政権参画するのであれば、地方へのバラマキは縮小される可能性があります。維新はこれを条件にしてくるかもしれません。
その場合、地方に危機感が増幅するとして、その勢力が大きな仕掛けをしてくる可能性はあると思います。それは、立憲と自民党の地方組織が組み、そこに公明も取り込んで、「高市=麻生=維新の連携」に対抗してくるという可能性です。
では、具体的な数字はというと、衆議院(定数465、過半数233)において、
- 自民(196議席)+維新(35)=231
- 立憲(148)+公明(24)=172
が厳しく対立するという構図です。実際のところは、後者の場合は自民党を切り崩して、例えば石破首班などという仕掛けも含めて工作をすることになると思います。前者の場合は、自民の造反を最小限にしなくてはなりません。勿論、数字的には国民民主(27)がキャスティングボードを握るように見えます。ですが、財政規律と現役世代の利害ということから考えると、国民民主はテクニカルにこの「どちらとも組めない」わけです。
ただ、そのどちらも世論の圧倒的な支持を得ることはできず、そんな中で、早々になし崩し的に解散総選挙になるかもしれません。その場合は、仮に「良いタマ」を揃えることができれば、国民民主が大勝する可能性があります。玉木=榛葉ラインとしては、政権を取るのはその後でいいと考えているかもしれません。
いずれにしても、表面的にはカオスのような政局ですが、ストーリーの本筋はやはり「カネ」つまり経済にあるのだと思います。高齢者福祉か、現役の手取りなのか、そして財政規律をどうする、という部分で、組める・組めないというマッチングがあり、そのメカニズムはかなり重要だからです。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2025年10月14日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週の論点「『切ってから回収?』万博ユニホーム問題を考える」、人気連載「フラッシュバック80」もすぐに読めます。
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