全くのファンタジーとしか言いようがない国民民主の政策
では、公明党にしてもこの点を堂々と主張すればと思うのですが、実際は難しいのが実情です。団塊世代が年を追うごとに投票所に行けなくなっている中では、有権者の層の世代交代は顕著です。そんな中で、「75歳以上の2割負担はきついので優遇(※の部分)を延長して欲しい」とか、「できれば1割負担で」というような主張をすれば突っぱねられるのは明白です。
現役世代からは、子育てと物価高で大変な中、自分たちは所得にかかわらず3割負担なのに、経済大国時代を謳歌してきた高齢者が1割とか2割というのは「あり得ない」という声が来るのは当然です。また、そのような世代が投票所に来るようになっている現在、世代間格差を修正するために、後期高齢者の優遇を見直すという機運は広がっていると思います。
そんな中で、恐らくは麻生=高市ラインの動きの中に、公明としては絶対に見過ごせない一線を超えるものがあったのに違いありません。この問題は、表に出れば現役世代の世論が炎上して「全世代3割負担」という声が大きくなる性格のものです。ですから、公明は堂々ということはできず、「靖国ガー」とか「外国人ガー」などというイデオロギーの話でウヤムヤにしていますが、本丸は「後期高齢者」だと思います。
さて、仮にそうだとすると、公明は「実は提携できる相手が共産党ぐらいしかいない」という状況になっていると思います。衆院で24議席を持っているにもかかわらず、連立の足し算マトリックスで自由に動けないのは、このためと考えられます。
公明についてはそのぐらいにして、問題は国民民主です。まず、ここまでお話してきたように公明が後期高齢者の医療費2割、1割負担の維持にこだわっているのであれば、国民民主とは水と油だということは言えます。国民民主は、2割負担をハッキリ打ち出すとともに、高齢者の医療制度に現役世代の組合等からの拠出を「カット」して、現役の保険料を3割削減するとしているからです。
更に、国民民主の「手取り」政策というのは、所得減税+地方税減税+消費減税(一律5%)が加わって、更に「ガソリン暫定税率+二重課税廃止」「電気代値下げ」というセットになっています。一見するとバラ色の政策ですが、一言で言えば「財源は明示されていない」のです。
ですから全くのファンタジーとしか言いようがありません。勿論、手取りを増やし、消費減税をすれば景気には多少プラスになるかもしれません。ですが、その景気のプラス分とそれによる税収増では、この数10兆円単位のマイナスは埋められません。強行すれば、日本国債はどんどん世界市場で厳しい評価を受け、日本円がジワジワ売られるということになると思います。
国民民主は、安保防衛では昔の民社党のように、あるいは新進党のように、基本的に戦後秩序と日米同盟を重視する穏健保守の立場です。そうなのですが、仮に財政規律について、ここまでユルユルの話を本気で信じているのであれば、麻生グループとは全くの水と油になります。
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