可能性ある高齢者の利害に厳しい自民と維新の組み合わせ
一方で立憲ですが、こちらは安保防衛で穏健リベラルという立ち位置です。一部は権威主義の毒が回っている部分もあるが少数に過ぎません。では、国民はどうして立憲を嫌っているのかというと、「安保と原発で組めない」というのは実はタテマエだと思います。
現在の野田党首を中心とした立憲というのは、実は「財政規律の党」だったりします。野田政権が自公とやった三党合意もそうですが、基本的に立憲というのは、戦前の民政党のように「都市の国際派インテリ」が支持の中核です。ですから、経済的には多少の余裕があり、そのために明日の生存への恐怖というのは軽く、明後日の破綻を気にすることが「できる」勢力です。
そのくせ、立憲というのは官公労とはズブズブで、この点は維新、特に東京維新(あんまり勢いはないですが)とは鋭角的に対立します。象徴的なのが、2008年以降の政権担当時に、当時の民主党が八ッ場ダムとかスパコンへの予算について「仕分け」をやっていた構図です。あれは、小さな政府論かというと、実はそうではなく「ハコモノのカネはケチって官公労の人件費は確保」という彼らなりの行動だったのです。
ということで、ここまでお話していたのを整理すると、
- 高市(=麻生)と公明は、高齢者福祉で組めない
- 公明と国民民主も、高齢者優先か現役世代優先かで組めない
- 立憲と麻生は財政規律では組めるかもしれない
- 麻生と国民民主は財政規律で組めない
- 維新と立憲は官公労利害のために組めない
という相互の関係性があると見ることができます。ちなみに、国民民主が立憲を嫌う場合、公明が麻生を嫌う場合に「イデオロギーや軍事外交」の対立がある「フリ」をしています。ですが、実はそうではなくて「カネ」の話が主という理解をしたほうが筋が通ると思います。
そうではあるのですが、とにかく「後期高齢者の1割、2割負担」というのは、強く主張すると現役世代から大炎上するので、「表向きの話題にはできない」のです。そんな中で、今のようなイデオロギーの対立が誇張されるという現象が出ているのだと思います。
一つ、「提携の可能性がある」のは自民(高市=麻生)と、維新の組み合わせです。これはここまで述べてきた議論の裏返しであり、高齢者の利害に厳しいということでは、組める可能性があるからです。
維新と自民が組むのには勿論、基本的な難しさがあります。というのは維新の本拠である大阪では、自民党府連は公明と選挙協力しながら維新と血で血を洗う抗争をしてきたからです。そして、大阪における維新は猛烈な勢いで「納税者の不満」を吸収してエネルギーにして、「極端な小さな政府論」を進めてきました。
ですが、仮に自民が公明と手切れになるのであれば、維新としては組む条件が出てきたことになります。更に、基本は小さな政府論である維新ですが「自分たちには成長政策もあるんだ」ということを実証したいのと、自分たちなりにカジノ権益の支配を目論んで万博をやったわけです。この万博が、「予想に反して大失敗ではなかった」中で「地場経済には確かにプラスになった」という流れの中では、自民党の支持母体との和解は可能になっていると思います。
仮に、大阪における維新のパワーと自民の利害が矛盾せずに提携できれば、移民には相当程度なプラスになります。維新の場合は、地方政策が皆無ですが、いくら納税者の反乱だと言っても、地方に「死ね」とは言えないわけで、自民としては政権に取り込んで懐柔することは可能だと思います。
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