【渡航禁止?】ユーラシアを歩いて旅して20年!ユーゴで迫撃砲の攻撃に遭う

 

おいおい、日本人旅行者が乗っていいのかよ。躊躇していると兵士の何人かがぼくの腕を引っぱり、とうとうそのうちの1台に乗せられてしまう。30人ほどの乗客は全員迷彩服姿の兵士だが、僕が乗ったことをだれもとがめないし運転手も笑っている。知ーらないっと。

まもなくバスは出発し、2、3分後には検問も通過してしまった。こんなバスが3台連なって山中の狭い間道を右に曲がり左に折れして分け入り、標高を上げていく。

何人かがカタコトの英語をしゃべるので話したところ、彼らは全員クロアチア共和国軍の志願兵で、隣国ボスニア=ヘルツェゴビナでセルビア人勢力と戦っている同じクロアチア人や同盟関係にあるイスラム教徒へ、食料や医薬品・衣類その他の生活物資、さらには武器と弾薬まで運んでいるという。最後の武器と弾薬の供給は国際法上、違法らしいが、彼らは同胞救援のために命がけでこんな仕事に従事していた。

そんな志願兵に28歳のマテがいた。酒に酔ってぐでんぐでんで、とにかくはしゃぎまわって騒々しい。42歳の男が耳打ちする。

「マテにも妻と1歳の赤ん坊がいる。町でしこたま飲んでキャンプに帰るんだけれど、要するに怖いのさ。俺もひとまわり若ければあいつ同様、酒に逃げていたよ」

また志願兵の中にはイギリス人、ドイツ人、フランス人、アルゼンチン人、ハンガリー人などの外国人もいるそうで、実際、このバスには腰のベルトにセルビア製手榴弾を2個ひっかけたポーランド人兵士が乗っていた。

「クロアチア人はバカだ。やりたくもない戦争なんかしやがって」

「じゃあ、なんでポーランド人がクロアチア人と一緒にセルビア人と戦うんだい?」

「俺はただ戦争が好きだ」

そう答えてニヤッと笑った。

ちなみに志願兵の月給は100米ドルだそうである。彼らのほとんどが家族持ちで、もっと稼げる仕事に就いている。それなのにみずからの意志で、薄給で命を危険にさらそうとしているのだから酔狂といえばこれほど酔狂なこともないが、僕が話した全員が口をそろえて志願した理由を、

「家族を守るため」

と答えていたので、独身の僕でも彼らの気持ちがわかる気がする。

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