高市政権も超短命に終わるのか?「日本版トラス・ショック」で“日本初の女性首相”が退陣に追い込まれる最悪シナリオ

 

「麻生=高市路線」の他に存在する「残りの2つの角」

この麻生=高市路線をトライアングルの1つの角だとするならば、今回の政局で敗北し、退場となったのは「立憲=国民」路線だと思います。この2つのグループは、そもそも、全くの相反する政策を持っており、結果的にその「矛盾点を無視」しながら、共闘を模索したことで、両党ともに壊滅的なダメージを受けてしまいました。

まず、国民民主というのは、結局は「財源なき物価対策」ということでしかないということが、かなり暴露されてしまったと思います。つまり、そのまま本当に勢力が結集できて、そのまま玉木内閣ができたとしたら、「トラス・ショック」の再現になってしまうというわけです。財源なき物価対策ということですから、全くもって2022年のリズ・トラス氏の自爆組閣と瓜二つだったからです。

同時に立憲というのも、官公労利権は守りつつ、財政規律には厳しく、なおかつ比較的強い円を志向という路線が、少なくとも2010年前後ではまだ許されたわけです。ですが、2025年の現在では成立する条件がないことが明らかとなったのでした。更に、ここに公明が加わります。公明の利害は、多くが高齢化した支持層の利害で、恐らくは後期高齢者の医療費死守が最後の砦だったのでしょうが、高市氏を「切った」ものの、野党に転落することで崩壊への流れになってしまいました。

勿論、ここまでの2つの「トライアングルの角」については、現時点でもあまり表面化はしていません。「麻生=高市」路線も、「立国公」路線も、漠然としたイデオロギーの対立に見せかけていますが、本質は違います。財政金融政策に限りがある中での、政治的闘争という性格で見ていくべきです。

さて、「トライアングル」の残りのもう一つの角は、構造改革です。国の財政破綻を何とか回避する、そのためには税収アップにつながる「経済成長」が最も正しい方法になります。また経済成長は財政を好転させるだけでなく、ダイレクトに国民の生活水準向上にもつながります。ですが、現在の日本経済は成長の条件が足りません。

どういうことかというと、日本経済には根本的な2つの障害があるからです。

1つは「AI実用化どころかDXすら先進国水準から遅れを取っている」という問題があります。

2つ目は、「金融と先端技術の共通言語である英語が、ビジネス現場に十分に浸透していない」という障害です。

この2つの問題があるために、「日本経済はグローバル経済に適応できず、従ってグローバル経済の繁栄に直接リンクできない」のです。例えばですが、この2つの条件がなくても「ドルを担いで消費者が円圏に来てくれる」観光業というものに過度に依存しているのも、「そうするしかグローバル経済にリンクできない」からだとも言えます。

この2つの問題、つまりDXと英語の問題は、雇用改革の問題と裏表の関係にあります。DXと英語に適応できなくても、正規雇用であれば雇用は守られます。反対に、そのような人材を使うには紙と日本語に縛られた事務仕事が止められないのです。勿論、そうは言っても今は2025年です。21世紀に入って4分の1は既に過ぎています。ですから、多少まともな規模と質を持っている企業は、この2つには対応しつつあります。

ですが、反対に多国籍企業の一部だけしかDXと英語には対応していないし、対応していない労働力を抱えているわけです。ということは、そうした企業がグローバル経済にリンクさせて行くには、リンクしていない人材を入れ替える事が必要になってきます。そこで障害になるのが解雇規制の問題になります。

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