小林よしのり氏が高市「台湾有事は日本の存立危機」発言を猛批判。若者を戦地に送る“タコ首相”に追従の大マスコミとそれを望んだネトウヨの大罪

 

今なお大変に利用価値がある「女性」という属性

政府内でもこの答弁には当惑したらしく、同日、小泉進次郎防衛相は記者団に対して「いかなる事態が存立危機事態に該当するかは政府がすべての情報を総合して判断する。総理の発言は、その趣旨を述べたもので、従来の政府の立場を変えるものではない」と強調して「火消し」に動いた。

高市の発言は翌日の朝日新聞・読売新聞の1面トップ記事になり、立憲民主党の野田佳彦代表は週明けの国会で取り上げると発言した。

そして10日の衆院予算委では立民の大串博志議員が7日の「台湾有事は存立危機事態になりうる」との答弁について質した。

これに対して高市は、「政府の従来の見解に沿ったものなので、特に撤回、取り消しをするつもりはない。今後、反省点としては、特定のケースを想定したことについて、この場で明言することは慎もうと思っている。今後は慎む」と答弁した。

要するに進次郎が言ったよくわからない弁解を繰り返したわけだが、いくら7日の答弁は「従来の政府見解通り」だと強弁したところで、「台湾有事は存立危機事態になりうる」というのは従来の政府見解にはなかったことであり、高市がそれを現職総理大臣として国会で初めて言ったという事実には、何の変わりもないのである。

しかも10日の質疑では、再三にわたって「台湾有事は存立危機事態」発言の撤回・取り消しを求められたにもかかわらず、高市は頑としてこれを拒んだ。

いくら「今後は」特定のケースを明言することは慎むと「反省」したところで、一度は国会で明言して、しかもそれを撤回しないのである。つまり、台湾有事は日本の存立危機事態になりうるし、その際には集団的自衛権が発生して、中国と戦争をしなければいけないという国会答弁が、そのまま政府の公式見解として残っているのだ。

国が戦争をするかどうかの重大な判断に関わることが、こんな曖昧な状態にされていていいわけはなく、大串議員は「政府統一見解」を示すよう求めたが、高市はそれも拒み、この件は衆院予算委として理事会で協議されることになった。

高市が発言を撤回せず、政府統一見解も示さないということは、高市の独断で日本は中国と戦争をすることもありうる、という話にもなってしまう。

中国の大阪総領事が高市の発言に関してXに「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と投稿して炎上した。これはあまりにも品のない文句だが、中国側からすれば、何の覚悟もないくせに「勝手に首を突っ込んできた」としか見えないのも確かだろう。

台湾有事になれば、日本は戦争をする。中国と戦争になって戦死者がゼロで済むわけがなく、確実に自衛隊に戦死傷者が出ることになる。

今までだったら、「戦争に巻き込まれるな!」だの「戦争反対!」だのという声が沸き起こって、もっと大問題になったはずである。

ところが、なぜか今回は異様に静かである。新聞が1面トップで扱い、国会で追及はされたが、テレビもあまり扱わないし、ネットでは全然騒がず、ほとんど問題にもなっていない。話題になるのは物価高だのガソリン税だののことばかり。あまりにも異常な状態である。

なぜそんなことになるのか?

それはやはり、高市早苗が女だからだろう。

あんなことを男の首相が言ったら、間違いなく大騒動になる。ところが女の首相だったら平然と流してしまい、マスコミも世論も沈黙してしまう。

結局は、女は優しいはずだとか、女は危険なことを言うはずがないとか思い込んでいるからなのだ。

女性という「属性」で差別するなとか言ったって何の意味もない。実際に男だったら絶対に許されないような発言でも、みんな女という「属性」にやられてスルーしちゃっているではないか。

女っていう属性は、今なお大変に利用価値があるものなのだ。

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