自衛官に「死んでくれ」と言う資格が高市首相にあるか
台湾有事を日本の存立危機事態と見なすということ自体には、わしは反対とは言わない。わしは『台湾論』を描いた人間なのだから、台湾は守りたいと思っている。
鳩山由紀夫みたいに「あくまで台湾は中国の内政問題であり、日本が関わってはならない」なんていうのは論外である。
台湾を中国が侵略しても、日本が武力行使もせずに黙って見ておくなんてことは、決してしてはならないというのがわしの本音だ。

だがそれは自衛隊員に向かって、中国と戦って死んでくれと言っていることに等しい。だからその主張は、神妙な気持ちで言うしかない。
高市早苗は内閣総理大臣であり、自衛隊最高指揮官である。自衛隊員に向かって直接、台湾有事は日本の存立危機事態だから、死を賭して戦えと命令する立場である。
ところがその最高指揮官が米兵の前で舞い上がって、ジュリアナのお立ち台ギャルみたいにぴょんぴょん飛び跳ねたのだ。あれを見てどこの自衛隊員が、こいつの命令に従って死ねると思えるだろうか?
わしは『台湾論』の取材で、中国大陸から最も近いところで2.1kmしか離れていない台湾の最前線基地・金門島に行き、軍の水中特殊部隊(フロッグ・メン)の訓練を見学したことがある。
案内されるままに行ってみたら、一段高い来賓席が用意されていて、その前に灼熱の太陽の下、屈強な男たちが整列して待っていた。
フロッグ・メンの使命は海の中に潜って、敵の船底に爆弾を仕掛けたり、機雷の処理をしたりというとんでもなく過酷なものだ。その訓練となれば死ぬ訓練をしているようなものにも見えて、そんなものすごい光景を、一段高い来賓席に座って見下ろしていていいのかと、それだけでもわしはすごく緊張した。
しかもわしの隣には、同行していた秘書の金森と、ガイドの謝雅梅さんという、二人の女性が座っていた。
わしは、男が命懸けの訓練をしているところに女なんか連れてきたということが恥ずかしいと思った。これは男尊女卑の感覚である。しかし、実際に生死の懸かっている現場にチャラチャラした奴がいたりしたら、それは忸怩たる思いに駆られてしまうのは仕方のないことだ。そこではやはり神妙にならざるを得ないのだ。

※ 『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論』(小学館)より
兵士に国のために死んでくれと言うのなら、厳粛な態度を取らなければならない。
人の「態度」や「振る舞い」なんてものは、見る人の感性によってどうとでもとれるとか言う人もいるが、そんなことはない。やはり態度は重要なのだ。米兵の前でぴょんぴょん跳びはねて喜んでた奴に、自衛隊の前で「死んでくれ」と言う資格なんかあるわけがないのである。
保守は「態度」であるというのは全くその通りで、真正保守ならば、やっぱり態度が大事である。人の本性は態度に表れるものなのだ。
この記事の著者・小林よしのりさんのメルマガ








