ウクライナにとって受け入れ難い戦闘終結の新たな計画案
10月10日に合意後、履行されているトランプの20項目を軸に和平協議が進められており、今回の米国提案での安保理決議では、イスラエルの激しい反対を想定しつつも、ガザ復興と地域の恒久的な平和を目指すために必要なイスラム諸国の賛同を引き出すために、平和評議会の下にパレスチナ人主体の統治機構を設け、それが行政の実務を行うことに加え、将来的なパレスチナ国家樹立の可能性にも踏み込むという思い切った転換を行っているのは注目に値すると考えます(一応、アメリカ政府からイスラエル政府への“説明”では「平和評議会の議長はトランプ大統領が勤めるのだから、イスラエルにとってさほど悪いことにはならない」となだめようとしているようですが)。
しかし、賛同している国々の間でその細部についての認識と理解にはズレがあり、正直、体裁だけ整えた中身のない合意であるという印象が否めず、さらにはイスラエルがすでに激しい非難を行っていることから、今後、ガザ市民を再び人質にとるような非人道的な行為の横行と、中東地域に起こり得るさらなる混乱の引金になるような気がして懸念しています。
ではもう一つの“和平”案件であるロシア・ウクライナ戦争はどうでしょうか?
こちらについては、詳細は未だ不明ですが、米ロが直接に協議し(ウクライナ抜きで)、28項目からなる戦闘終結に向けた新たな計画案を作成し、18日頃から欧州各国とウクライナに対して説明を始めたという情報が入ってきました。
その内容の主だったものとしては【ウクライナでの和平の実現】、【ウクライナに対する安全の保証】、【欧州地域における安全の保証(アメリカが同盟国の安全の確保にコミットする)】という、一見、ウクライナと欧州が米ロ首脳会談後にトランプ大統領に伝えた要望が含まれているように見えますが、この和平案では【ウクライナに東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)の割譲を求め】、【ウクライナ軍の規模を今の50%未満に削減すること】、【ウクライナに長距離射程の兵器の製造を停止させる】、そして【米国の軍事支援を停止または著しく削減する】という項目が含まれていると言われており、一言でいえば“ウクライナに主権放棄”を求めるような内容に等しく、とても受け入れられないと考えられます(そして実際にゼレンスキー大統領にとってこの内容を呑むことは、自国の憲法の規定に反することとなり、ウクライナと言う国家の未来を売り渡すことになるため、彼としては拒否するしか選択肢はない)。
米国側はウィトコフ特使が協議を担当していますが、これまでの中東での和平協議の“失敗”からも明らかなように、このような紛争を仲介する能力が著しく欠けていると思われ、明らかにロシア側の要望をコピペしてロシア側に寄り添うことで戦闘を停止することに重点を置き、その後の懸念に対しては一切考慮していないのではないかと感じます。
実際に彼と行動を共にしている補佐官的な人物からは「これは戦争終結に重きを置いたトランプ大統領の意向であり、もしウクライナおよび欧州各国が、トランプ政権がロシア政府とまとめた案を一蹴するようなことがあれば、アメリカ政府はこの紛争の仲介から一切手を退き、この今後、ウクライナの安全の保証に加わるつもりはないし、欧州各国はアメリカによる安全の保証を拒絶するからには、有事の際にアメリカに助けを求めるべきではない」といかにもtake it or leave itの姿勢を取っている様子が覗え、非常に難しい判断をウクライナおよび欧州各国に迫っている様子が分かります。
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ









