至極当然なものである高市の「存立危機事態」発言
これは実はアメリカのプライドの問題ではなく、実情として仮に中国が台湾を手中に収めるようなことになった場合、東シナ海におけるシーレーンをことごとく中国に握られることになるばかりか、日本や韓国も中東やアフリカとの交易に不可欠な“安全な海上物流ルート”を即刻脅かされることになり、同時に台湾が中国の影響下に陥った場合には、米軍の沖縄における駐留も直接的に中国のsphere of influenceの侵害と言う認識がまかり通ることになる可能性が高まり、領海侵犯として中国人民解放軍から攻撃対象にされる事態も想定され、その場合、米軍のアジア太平洋最前線がハワイやグアムまで後退することを意味するため、それは直接的に日本の国家安全保障に影響・脅威を与えることになります(ゆえに、今、巷で燃えている高市総理の存立危機事態発言は至極当然なものであることがお分かりになるかと思います)。
いろいろな紛争案件が現在の国際情勢には存在し、報道ではそれぞれが別の案件であるかのような描き方がされていますが、ロシア・ウクライナ戦争とイスラエル絡みの中東案件は直接的につながっていますし、アゼルバイジャンとアルメニアの間で燻る緊張も、アフリカ大陸を舞台に繰り広げられている内戦と大国間の代理戦争も、そしてミャンマーやタイ、カンボジアなどを舞台に起きているきな臭い対立も、その背後には国際社会における主導権を維持し、かつパワーハウスとして君臨したい大国の思惑が複雑に絡み合い、衝突しているものと考えられます。
トランプ大統領の登場により、乱立する紛争間のバランスの上に成り立ってきた非常にデリケートかつ負の安定が崩れ出し、それぞれの解決が見えてきたことはいいことだと考えることはできますが、同時に一つハンドリングを間違えたら一気にバランスが崩れ、一気に紛争間で飛び火・延焼が起きて、世界的な戦争の時代に突入することになります。
紛争調停においては当事者それぞれのWish Listの提示と明確化は必要で、そのwish lists間のデリケートなすり合わせが調停人の腕の見せ所なのですが、紛争の解決とは名ばかりの見せかけだけの調停が、各国の政治的な思惑をベースに横行する現状下では、戦争を止め、再度、破壊されたコミュニティーを再建し、人々の相互信頼を再醸成するという調停および復興のためのプロセスを、どこからいかにしてはじめればいいのか、非常に見えづらい難しい状況になっていると日々感じます。
これまで長年トルコと密接に仕事をしてきたご縁もあり、いろいろな側面で協力することになりそうですし、また世界中を飛び回る日々が訪れそうですが、何かしらポジティブな成果を収めるには、アメリカのトランプ大統領および政権との協力は必須で、今、アメリカ・ファーストどころか、アメリカ・オンリーの姿勢に変わってきているようにさえ見えるアメリカをいかに国際協調の輪の中に引き戻し、複雑に絡み合う紛争の連鎖を止めるための術を見出すことができるかという難題に向き合うことになりそうです。
何かよいお考えがありましたら、ぜひご助言抱ければ嬉しいです。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年11月21日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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