生成AIの急速な進化により、これまでチームで行っていた仕事を個人がAIを活用して処理できる時代が到来しています。デザイン業界では「1人事務所+AI」という働き方が現実的な選択肢となり、中間層の役割も「作業要員」から「AIと人をつなぐハブ」へとシフトしつつあります。一方で、タクシー運転手や美容師、教師など、人間の関与が必要とされる領域はケースバイケースで、顧客のニーズや業界特性によって大きく異なります。AIが感情理解能力を持つようになれば、この構図も変わる可能性があります。エンジニアでありながら起業家、そして投資家としても活躍する中島聡さんが、メルマガ『週刊 Life is beautiful』の中で、AI時代における人間の役割と価値について鋭い考察を展開しています。
プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
生成AI時代の働き方
生成AI時代の働き方については、このメルマガでも何度か書いて来ましたが、参考になる記事を見つけたので紹介します。
読む価値がある部分を抜粋すると、
ひと昔前なら「チームを組まないと回らなかった」ボリュームを、トップレベルのデザイナー 1 人が AI を駆使すれば、物理的には回せてしまう未来が、かなり現実味を帯びてきました。特に、「自分ひとりが暮らしていく分だけ稼げればいい」「小さく、身軽に、好きな仕事だけやりたい」というライフスタイルであれば、「1 人デザイン事務所+AI」という形は、相性抜群だと感じます。
人件費も固定費も軽い。コミュニケーションコストも最低限。自分の裁量で仕事量もペースもコントロールできる。そういう意味では、AI 時代における一つの理想形として、「1人事務所」はこれからますます増えていくだろうな、と思っています。
となります。しかし、AIを使ったからと言って、クライアントとのコミュニケーションなどの作業は依然として存在し続ける点を指摘した上で、以下のように展開している点も悪くないと思います。
ただ、「中間層がすべていらなくなる」とまでは思っていません。消えていくのは、「作業要員としての中間層」であって、「AIと人とクライアントをつなぐハブとしての中間層」は、むしろ価値が上がっていくはずだと感じています。
と書かれている点も興味深いと感じました。
しかし、これはケースバイケースで、たとえ顧客とのコミュニケーションであっても、人間が必要なケースもあれば、逆にいない方が良いケースがあります。
分かりやすい例が、タクシーとロボ・タクシーです。タクシーの運転手との会話を楽しむ人がいることは理解できますが、ほとんどの人は、ロボ・タクシーを好むだろうと思います。
床屋や美容院になると、人それぞれで、美容師との会話を楽しみながら、髪を切ってもらう時間を楽しむ人にとっては美容師の存在は必須ですが、私のように1分でも早く髪を整えて欲しいと考えている人には、ロボットで十分です。
この記事で取り上げられているデザイナーのような仕事は、顧客が持つ「満足感」「納得感」が結構重要なので、まだまだ人間が活躍する余地がある業界だとは思いますが、「相手の気持ちを読む」ことすら上手なAIが誕生すれば、そこも変わってくるかも知れません。
教育現場でのAIの活用について議論する際には、それぞれの子供に24時間付きっきりで理解度に応じた教え方をしてくれるAIチューターの価値は認めつつも、「子どもたちのやる気」や「子どもたちのメンタル面」に関しては、人間の教師が不可欠だと主張する人が多いですが、それも「EQの高いAI」ができれば解決する話であり、時間の問題のようにも私には思えます。
いずれにせよ、この話は、「これからの子供達には何を勉強させるべきか」「AIが多くの仕事をこなすようになった時に、人間は何をすれば良いのか」というとても重要なトピックなので、このメルマガでも色々な角度から議論して行きたいと思います。







