高市首相「存立危機事態」発言が中国に与えた“攻撃”の大義名分。日中の文化交流まで崩壊させた“最悪の連鎖”の責任を誰が取るのか?

 

日本を代表する超有名ギタリスト「北京公演中止」の怪

でも、相模原市の友好イベントは、まだ開催されただけマシだったのです。在大阪中国総領事館が11月21日に広島市南区で開催を予定していた「西日本地区中日友好交流大会」や、11月29日と30日に福井県あわら市などで開催予定だった在名古屋中国総領事館と中部6県の日中友好協会との交流行事など、イベント自体が丸ごと中止になってしまったものも複数あるのです。

たとえ両国の政府同士がギクシャクしていても、民間レベルでは交流を続けてお互いを理解し合い、同じアジアの国同士、仲良くやって行こうという多くの人々の長年の努力を、高市首相は無神経で無分別で無責任な発言で台無しにしてしまったのです。こうした交流イベントを開催するために、どれだけ多くの人たちが、どれほど前から準備をして、参加する人たち、子どもたちがどれほど練習して来たのか、そして、どれほど多くの人たちが開催を楽しみにしていたのか…。先にケンカを売った側の国民の1人として、あたしは本当に胸が痛いです。

しかし、これだけではありませんでした。高市首相の問題発言による日本の被害は、まだまだ広がり続けたのです。

まずは中国で11月22日に公開予定だった劇場版アニメ『はたらく細胞』と12月6日に公開予定だった劇場版アニメ『クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』の公開が中止となりました。そして、中国で11月14日に公開して大ヒットしていた劇場版アニメ『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』も、突然、公開していた劇場の数が一気に減少し、興行収入もそれに伴って大幅に減少したと報じられました。

こうした流れの中で、あたしが特に驚いたのが、高市首相の問題発言から2週間後の11月20日に発表された、ギタリストの高中正義さんの「北京公演の延期」の発表でした。高中正義さんは11月29日に「北京1919 LIVEHOUSE」で公演を行なう予定で、すでにチケットの販売も終了していました。それが、開催9日前という直前に、突然、中止が発表されたのです。公式サイトには、以下のように説明されています。

現段階で発表されている各方面の政策方針、ならびに主催者・出演者・宣伝各方面による現下の情勢の慎重な検討を行い、誠に遺憾ながら、より確実に皆様に心からライブを楽しんでいただける環境の確保を最優先し、本公演の延期を提案せざるを得ない状況となりました。

この決定は、中国の各関係者様との綿密な打ち合わせ、および他業界の専門家様からの多岐にわたる参考意見を総合的に勘案した結果でございます。ご来場いただく全ての皆様を最優先した結果でございます。

予測しきれない現場の状況、および渡航や移動に伴う予期せぬトラブルなど、興行を取り巻く環境に不確実性が高いと判断いたしました。

これらの潜在的なリスクを現実的に鑑みた結果、ご来場いただく全ての皆様のリスクを最小限に抑えることが最善であり、現状のままでは公演当日の良好な運営および、皆様に最大限楽しんでいただける環境を確約することが難しいと判断し、やむを得ず延期という判断に至りました。

北京公演について(高中正義オフィシャルサイト)

これらの説明は、あくまでも自主的な判断として延期に至ったという体(てい)で書かれています。しかし、長い時間と予算をかけて準備して来た海外公演で、すでにチケットも販売済みであり、日本から参加するファンは全員が航空チケットも宿泊ホテルも予約している状況なのです。それなのに、どこからも何も言われていないのに、自主的な判断だけで延期などするでしょうか。

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