直接的には発言せず背後で手ぐすねを引いている中国
今、アメリカ主導でのガザ和平第2段階の条件内に【ハマスをガザの統治構造から排除するとともに、ハマスの武装解除を成し遂げる】という内容がありますが、それらの実行に抵抗しているのはハマスだけではなく、実はunited Palestineの絆を通じて、一構成員の排除を外野から明示されることへのグループとしての強い反感と抵抗が要因としてあると言われています。
中国は直接的には発言せず、ただイスラエル、特にネタニエフ首相への批判と非難に終始するだけで、和平合意の履行に対する支持も非難も行わない姿勢を貫いていますが、これは言い換えると、アメリカ主導のプロセスに対して反対勢力を纏めるべく、背後で手ぐすねを引いている、というようにも表現できるかと考えます。
トランプ大統領による紛争の仲介努力は、これまで停滞していて行き詰まり感が否めなかった各案件を前に進め、話し合いの場を強引にでも設置させることで、再び当事者間に“停戦”や“和平”に向けた意識付けをすることに大いに貢献したと考えますが、ロシア・ウクライナ戦争やイスラエルとハマスの戦いのケースのように、リーダーとの個人的な繋がりを前面に押し出して、調停を進めようとしたことについては、ポジションとネガティブの両面があると考えます。
個人的なつながりを前面に押し出すことで、イスラエルのネタニエフ首相を振り向かせて、話を聞かせる環境を作りましたし、「停戦・和平協議の実施に乗り気ではなかった」プーチン大統領を対話の席に就かせ、かつ久々の米ロ首脳会談に漕ぎつけ、完全にdeadlockに陥っていたロシア・ウクライナ戦争において“話し合いによる解決”という外交的な選択肢を再浮上させたことは大きな功績だと思います。
しかし、個人的なつながりに重きを置きすぎる傾向により、ネタニエフ首相が聞く耳を持たなかったり、(イスラエルの)国内情勢に鑑みて、【ネタニエフ首相が100%トランプ大統領に従うことができないという状況】があったりする場合、意図した方向に導くことが叶わず、ジレンマに陥るという危険性を不必要に生み出してしまいました。
自分とアメリカが肩を持ち、国際社会からの激しい非難にも関わらず、ネタニエフ首相とイスラエルを庇護しているにもかかわらず、ネタニエフ首相が自らの思い通りに動かないことには苛立ちを隠せず、ビビ(ネタニエフ首相)が自分の顔に泥を塗っているとさえ感じ始めており、最近は「和平案の実行に抵抗し続け、平和に向けての動きを自ら止めるのであれば、アメリカはネタニエフ首相とイスラエルを見捨てざるを得ない」とまで発言しています。
これは、苛立ちと共に、上下院において超党派で広がる対イスラエル・対ネタニエフ首相非難の拡大という傾向を受けての変化とも言えますが、ネタニエフ首相とイスラエルにとってあまり旗色の良い状況にはなっていません。
そのような状況をベースに、アラブ諸国とイスラム教国は、これまでにないほど結束を固め、イスラエルによる組織的な対ガザ市民・パレスチナ人虐殺行為と非人道的行為を激しく非難し、イスラエル包囲網をどんどん狭めています。
トランプ大統領が中東和平の強力な武器とし、かつイランをアラブから再度引き離すために用いたかったアブラハム合意に対しても、UAEなどの既存の締約国も、鍵となるサウジアラビア王国も反対の意を示し、グループとして「即時停戦とイスラエルによるパレスチナ全域および周辺国への武力行使を即時停止の上、パレスチナ国家の樹立を認め、2国家解決が図られるまでは、イスラエル政府との交渉は一切行わない」として、イスラエルとのつながりを断つ決定をしました。
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