「プーチンの戦略」の上で踊らされているトランプ
これはイスラエルとアラブ社会との融和を通じて、イランを孤立させ、中東地域の安定を実現するというトランプ大統領の方針が根本から狂うことを意味し、このままの状況では、トランプ大統領のアメリカは(大きな投資先としての)アラブを失うだけでなく、中東に対するロシア・中国の勢力拡大を許すことに繋がるため、大きな懸念を抱き、それがイスラエルに対する圧力の強化に繋がるというサイクルが生まれ、複次的な緊張の高まりがみられます。
トランプ大統領としては、アメリカ国内の支持基盤でもあるプロイスラエルのキリスト教福音派や、ユダヤ人コミュニティーへの気遣いもあり、容易にイスラエルを切り離すことが出来ずにいますが、その曖昧な姿勢はアラブ社会からの非難の的になり、このままではアメリカは親米だったアラブを失い、国際社会におけるパワーバランスに大きくかつネガティブな変化をもたらすことになってしまうかもしれません。
最近、あまりガザについて語っているトランプ大統領を見ていない気がしますが、次に何らかの発言を行う際、どのような内容になっているのかは、とても注意深く聞き、理解する必要があるかと考えます。
ロシアのプーチン大統領に対する感情については、第1次政権時から明らかにプーチン大統領へのあこがれにも近い感情があり、「誰も話し合えないブラディミールと話すことができるのは私だけ」という自負とアピール看板もあって、プーチン大統領との話し合いを重視するがあまり、その実現のためにはプーチン大統領の言いなりになっているとの印象が拭えず、再三提示している“停戦案”も、明らかにロシア寄りの内容になっているだけでなく、その受け入れをウクライナに迫るという、明らかに仲介者としての中立性を欠く言動を繰り返す原因になっているように見えます。
アラスカ州アンカレッジで開催された久々の米ロ首脳会談でもそうですし、その後、何度も発表されては打ち消される追加首脳会談、そして“開催については拒否しない”とプーチン大統領が伝えたウクライナ・ゼレンスキー大統領との首脳会談の開催の可能性…いろいろと手を変え品を変えトランプ大統領の関心を惹き、いろいろと条件を突き付けては、ウクライナおよびその背後にいる欧州との調整をアメリカに任せ、代替案または妥協案が提示されれば、トランプ大統領を怒らせないぎりぎりのラインで拒絶して、ひたすら時間を引き延ばし、その間にウクライナに対する攻撃を強めて陣地の拡大に努めるという、プーチン大統領の戦略の上で踊らされているのが、トランプ大統領によるロシア・ウクライナ戦争の仲介の現状かと考えます。
「トランプ大統領は関税措置の発動や経済制裁の強化などを口にするが、実際には発動できないだろう」
「トランプ大統領はロシアとの直接的な対峙を願っていない」
「トランプ大統領は、一刻も早く戦争を終えること、それに自分が貢献したことをアピールすることにしか関心がなく、停戦後のウクライナの処遇にはさほど関心がないだろう」
「合意をまとめかけたら挙って口を出してきて、進捗を止めてしまう欧州各国に対して、トランプ大統領は少なからず苛立ちを隠さなくなっている。でも欧州に戦後処理の責任とコストを負わせるために、欧州各国を無碍に扱うこともできない。ならば、欧州の説得はアメリカにやらせればいい。それをロシアは高みの見物をし、その間に着実に陣地を拡大することに専念すべき」
いろいろな計算と仮定がプーチン大統領の頭の中で構成され、うまく掌の上でトランプ大統領とアメリカを躍らせて、着実にロシアによるウクライナの属国化という、ロシアにとっての根本的な脅威の除去という目的に邁進しているのが現状と思われます。
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