結果的にアフリカからも追い出されることになるアメリカ
これが何を意味するかと言えば、2025年、トランプ政権がアジアを軽視してきたことと、タイとカンボジア間の紛争調停に関与しながら、結局は放置したことへの地域からの怒りと苛立ちが高まり、それをうまく中国がつかみ取り、地域におけるバランサーの役割を、ここでも手に入れたのではないかと推察します(本当はこの役割を日本が果たしてほしいと強く願っているのですが、ちょっと出遅れましたかね?)。
「ウクライナとガザが片付いたら、次はアジアだ」とトランプ政権の外交担当の皆さんは息巻いているようですが、ウクライナとガザの案件がいつ片付くかは見通せず、さらにはタイとカンボジア間の仲介の失敗を受け、トランプ政権のアジア軽視のイメージが、中国による情報工作もあって、強化されているため、実際に台湾問題や中国による南シナ海での態度などをダシにアメリカが“アジアに回帰”した際、果たして本当にアメリカが活躍できる余地があるかどうか?またアメリカの地域外での活動を支援するアジア諸国(特に東南アジア諸国)がどれほど存在するかは全く見通せないと感じます。
このアメリカのプレゼンスの退潮は、アフリカでも顕著になってきています。先日、歴史的な合意とアピールしたルワンダとコンゴ民主共和国との間の和解合意で久々にプレゼンスを示したアメリカ政府ですが、スーダン内戦の仲介に失敗したことと、東アフリカ諸国を悉く中国(とロシア)に取られ、あまりアメリカおよび欧州各国が活動できる余地がなくなっている現実を前に、どのような巻き返しを図ろうとしているのかは不明です。
いろいろと政府関係者にも聞いてみるのですが、皆揃って具体的なイメージは持っていない印象で、このままだと経済・技術支援を柱とした戦略的パートナーシップ攻勢で支持を広める中国と、内戦を有利に進めるために軍事的な支援を必要とするアフリカの政府または反政府軍をすでに取り込んでいるロシア(ワグネルの活動を含む)に、東部アフリカのみならず、現在、クーデターベルトと化している西アフリカから中央アフリカのエリアまで、中ロの影響の下に置かれ、結果的にアメリカ(と欧州)がアフリカから追い出されることになるかもしれません。
そのようなことになると、支配下には置かれないものの、アフリカと広域アジアが中ロの影響圏色が強まり、世界におけるパワーバランスの構図が大きく変わります。
そして、ラテンアメリカ・カリブ海諸国の趨勢ですが、これまで長きにわたり“アメリカの裏庭”として、かなり強引にアメリカの影響圏に置かれ、反米勢力はアメリカによるあからさまな工作活動と内政干渉によって、非常に難しい立場に置かれることで、アメリカ色が強まるという結果を生んでいましたが、それがトランプ政権下で繰り広げられるラテンアメリカ・カリブ海諸国への圧力と一方的な非難により、ちょっと事情が変わってきている印象です。
特に最近、危険度が高まっているアメリカによるベネズエラへのあからさまな威嚇行為と“麻薬カルテルの撲滅”という言い訳の下で、公海上での船舶の拿捕と撃沈をはじめ、横暴が繰り返されていることから、ラテンアメリカ諸国の反米感情が高まってきており、ブラジルのルーラ大統領は「アメリカがベネズエラに行っていることは非常に危険な賭けで、このままアメリカはラテンアメリカを失うことになる」という懸念が高まっています。
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