攻撃を受けたイランで想定される「ワーストシナリオ」
これは大変に大きな激動であると思います。この激動を受けて、時差の関係で週明け最も早く相場の開いた東京市場では、日経平均が一時は5万7,300円まで下がり、2日の月曜日の終値でも793円安(マイナス1.35%)の5万8,057円となっています。
ところが、その後に開いたNY市場では、朝方は安く始まったものの、昼までには相場は戻して前日比変わらずといった落ち着きを見せました。終値でも、ダウは0.15%マイナスでしたが、NASDAQは0.36%上げています。これは、非常に分かりにくい動きです。過去には大きな戦乱が始まった際には、有事のドル買いというのはありましたが、同時に株は先行きの不透明感から大きく下げるのが普通でした。今回は、一体何が起きているのか、考察をしてみたいと思います。
まず、今回の作戦では最高指導者ハメネイ氏を殺害、更に閣僚や軍の幹部まで殺してしまいました。これによって、イランの体制は激しく動揺しているのは間違いありません。では、市場はこのイランの体制が「4から5週間で安定する」と見ているのかというと、そうではないと思います。
一つの可能性は、デモを行った結果、現体制から激しく弾圧されている若い世代の世俗のグループが権力を掌握するというシナリオです。いわばイランが宗教国家ではなく普通の共和国になるというわけですが、これは難しいと考えられます。今回のアメリカ・イスラエルの攻撃があった以上は「やはりデモ隊は外敵と通じていた」とされてしまい、イラン国内の漠然としたナショナリズムからは、全面的な支持を獲得するのは難しいからです。
一方で、アメリカの政権周辺からは、1979年の革命の際に亡命したパーレビ国王の息子を、改めて指導者として復帰させる可能性を語る声が出ています。ですが、そもそもパーレビ政権は、1953年に石油会社を国有化したモサデク政権を、CIAなどが打倒して勝手に据えた政権です。現在の宗教政治への反発は民意の中にありますが、親米政権として失敗したパーレビ政権の再現というのは、これも非現実的だと思います。
ワーストシナリオとしては、内戦の勃発ということもあり得ます。例えば、革命防衛隊については、司令官が今回の攻撃で死亡しています。ですが、革命防衛隊は巨大な組織であり、特殊部隊に当たる「コッズ部隊」なども傘下には抱えています。そうした保守的な軍が、改革を望む市民と敵対するということは、十分にあり得ると思います。
例えば女性の人権を主張するグループが集まる都市に攻撃を加えるというような事態も想定できます。また、地方とテヘランが軍事的に対立する可能性もあります。あるいは79年の革命時もあったクルド系の独立運動が決起するような場合は、これに対して国軍が激しい弾圧を加え、動揺がイラクに及ぶということも考えられます。
この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ









