「アメリカ・ファースト」と原油価格高値誘導の構造
では、現在のアメリカは、あるいは事態を楽観視している市場は、この点についての認識が足りないのかというと、そうではないと思われます。現政権の軍事外交姿勢は、あくまで「アメリカ・ファースト」です。ですから、本当にイランの市民の立場に同情しているわけではありません。また、民主党の「ブレジンスキー系列」の「リベラル・ホーク」とは違って、クルド系への同情もありません。
その一方で、3月2日に演説を行ったトランプ大統領は、「ブーツ」つまり米軍の陸戦部隊をイランに上陸させることは「絶対にしない」と言明しています。ですから、仮に内戦になったとしても、アメリカとしては「関係ない」というわけです。
そんな中で、今回の作戦に対する賛否については、緊急世論調査の結果は、賛成が30%弱、反対が30%強、残りは様子見という感じです。一方で、議会の方では、共和党と民主党のラインで賛成反対が明確に分かれています。一部、現政権のコア支持者であるMAGA派には、強い信念として「アメリカ・ファースト」の立場からは、他国の政権交代(レジーム・チェンジ)に関与することには強く反対する動きが見られます。
ですが、とりあえず大規模作戦の第一撃が成功したとされる中では、共和党側には大統領に反対する声は多くはありません。エプスタイン問題に怒って、議員を辞職したタイラー・グリーン前議員などは、激しく抗議しています。ですが、現職の議員達は中間選挙を控えて、予備選で刺客を送られるのを恐れて政権のやることは、何でも「丸呑み」する覚悟で動いているからです。
原油価格についても、市場は余り反応していません。日本の場合は、このままホルムズ海峡が航行不能のままですと、それこそ「第3次石油ショック」となってしまう危険があります。実際問題、LNGタンカーがここを通れないという状況は、非常に厳しいものになります。
ですが、アメリカの立場は全く異なります。歴代の共和党政権と同じように、トランプ政権も口では「物価高の痛みは分かる」と言いながら、基本的には原油価格の高値誘導をやっています。特に現在の情勢としては、
「仮にウクライナ和平が成立してロシア産の原油が国際市場に出回るようになると、原油価格が下がる」
「ベネズエラの超重質油を手に入れたが、これは精製にコストがかかるので、国際原油価格が上がらないと商売にならない」
「ついでに、アメリカ国内のシェール・オイルもコストが高いので市場価格が高くないと利益が出ない」
という構造があるわけです。そんな中で、今回のイラン攻撃によりペルシャ湾が緊張して原油価格が上昇することは、想定内というよりも狙ってやっている可能性を指摘する声もあります。そうした構造を前提に、全産業が対応する中では、原油価格の変動が即株安ということにはならないのです。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2026年3月3日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週の論点「就活ルール崩壊、ジョブ型雇用はどこへ?」「日本の警察が本当に心配な件」、人気連載「フラッシュバック81」もすぐに読めます。
この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ
初月無料購読ですぐ読める! 3月配信済みバックナンバー
- 【Vol.628】冷泉彰彦のプリンストン通信 『イラン攻撃でも下がらなかったNY株』(3/3)
image by: The White House - Home | Facebook









