トランプのイラン攻撃で台湾海峡が危機に?日本が直面する「中東と東アジア」の危険な連立方程式

 

高市支持者が冷静に考えるべき台湾海峡をめぐる問題

では、実際にこの台湾問題というのは、どのように理解したらいいのか、こちらも問題を構成している方程式を列挙してみたいと思います。

(5)不動産バブル崩壊の痛手は大きい中で、中国の国内経済を好転させる特効薬はない。その中で、経済対策の選択肢が政争の対立軸にはならない。そこで、政争としては台湾問題を強調することで、「どちらが強硬か?」を競うという不幸な事態が進行していると思われる。

問題はズバリ2028年の人事であって、習近平はポスト習近平の中に残っているものの、これに挑戦する動きもあると見る。したがって、これから「進攻準備の完了目標」である27年までは、現状の「台湾問題への強硬姿勢」が緩和される可能性は少ない

(6)一方で、香港の経緯を考えると、一国二制度という着地点はほぼ喪失したわけで、台湾側としてはソフトランディングのシナリオを採用するのは難しくなっている。

(7)問題は、対台湾への強硬姿勢が反日にリンクされてしまっているという問題で、これも簡単には解除できそうもない。

(8)そんな中で、法の支配、自由と民主という西側の共通理念は崩れてしまったという問題がある。これによって、少なくとも日米同盟においては、中国を批判する根拠となっていた理念が説得力を持たなくなっている。けれども、日本から見れば、自由のない権威主義的体制が与那国の先まで迫るのだとしたら、これは大変な恐怖である。

(9)4月にはトランプ大統領が訪中し、習近平との首脳会談がある。中国がイラン情勢に関して沈黙を守っているのは、この4月における米中会談を意識しているからだが、4月の米中会談では、恐らく暫定的な通商合意が成される可能性がある。そうでなくては、厳しい中国の国内経済を安定させることはできないし、米国の物価高も国民の許容範囲を超えてしまう。

というわけで、仮に米中合意が成立するのであれば、日本だけが孤立するのは何としても避けねばならないと思います。前述したように、アメリカの軍事プレゼンスが中東に偏在している中で、一触即発とは言わないまでも、台湾海峡の緊張が続くのは間違いありません。そんな中で、この台湾海峡の緊張を、日本がアメリカに代わって受け止めて、抑止力の均衡を維持するというのは、簡単ではないと思います。そこには、次のような方程式があるからです。

(10)このまま中国が高市氏を非難し続けて、高市氏がこれに対して強硬な姿勢を崩さないでいると対立エネルギーの累積が大きくなる。その場合に、「日本軍国主義は日中人民の共通敵」だという周恩来ドクトリンが崩壊し、半世紀にわたって続いた日中友好も崩れてしまう。また、福田赳夫の結んだ日中条約の理念も壊れてしまう。日米中の三角貿易も日中貿易も支障が出てきて、日本のGDPは大きく毀損してしまう。

(11)それでもいいので、米軍のプレゼンスが弱まった分を日本が補填して、抑止力のバランスを維持する場合、次の奇怪な計算式が登場する。それは、台湾海峡の対立エネルギーが100対100で均衡しているとして、仮に米軍のプレゼンスが20減少する分を自衛隊のプレゼンスを20増やして置き換えるというのは不可能ということだ。

それは日米同盟側は、100-20(米軍の減少)+20(自衛隊による補完)=100になるかもしれないが、その場合は自動的に中国側の抑止力100が120から130に増加してしまい、均衡が保てないということだ。

それは、自衛隊が台湾海峡の抑止力の表面に浮上すると、「解放軍はより予算獲得がしやすくなる」し「同じ装備でも士気が高まってしまう」からだ。そうしてかというと、中国サイドとしては「自衛隊が抑止力を置き換える」ということは、「復活した日本軍が対中国攻撃の前線に出てきた」という理解になるからだ。

この問題は非常に深刻な問題だと思います。恐らく、高市政権を支えている日本の世論には、この問題への危機感は薄いと思いますが、冷静に考えてみる必要があると思います。

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