同盟国を脅し敵国を元気づけるトランプ米国の終焉。NYタイムズが喝破した「ラックス・アメリカーナ」の異常性

 

アメリカ後の世界に別の覇権国など現れることのない当然の理由

さて、ロザダの議論の中で私が賛同しかねるのは、米国の覇権が終わった後に誰か別の者がその座を乗っ取るか、そうでなければ19世紀の野蛮な列強戦争の時代に戻るかのように述べていることである。彼は言う。

▼米国は、この80年間ほどは上手くやってきた。しかし、米国が自由世界のリーダーを辞めたことは明らかだ。その座の後継者は未だ指名されておらず、EUなりNATOなり、今の“西側”の内部から誰かが昇進してくるということもありそうにない。

▼「過去80年間の世界秩序を支えてきたアメリカの力は、今度はそれを破壊するために使われることになる」と、〔ネオコンの理論家〕ロバート・ケーガンはこの1月に警告を発した。彼が2006年に、植民地時代から19世紀に至る米国の外交政策史を描いた歴史書『危険な国家』を出版してから約20年後のことだ。「19世紀の列強による多極世界の現代版のような世界が現出し、中国、ロシア、米国、ドイツ、日本その他の大国が組み合わせを変えながら少なくとも10年に一度は戦争し、国境を描き換え、住民を追放し、国際通商を妨害し、破滅的な世界戦争を引き起こしかねないことになる」と。

しかし私の説では、「覇権交代」とは、資本主義の勃興期から隆盛期にかけて、海軍力を中心とする軍事力で優越しさえすればまだ誰も手が届いていない未開のフロンティアを先取することが出来た時代に特有の力任せの国際政治の野蛮な属性である。

水野和夫が言うように、もはやこの地球上に物理的なフロンティアが存在しなくなり、それを軍事力を以て争奪することの意味が失せたことによって資本主義は衰退期から終焉期に向かうのであり、従って米国の後に別の覇権国など現れることはないのである。

とはいえ、米国には、自国が衰退した後に中国が覇権を奪い、ロシアとも手を結んで“西側”を脅かすのではないかという恐怖感が根強い。

もし本気でそう思っているなら、それは冷戦後遺症で、かつてソ連・中国はじめ共産主義の脅威に雄々しく立ち向かった頃の米国の強さへのノスタルジアである。本気でないとすれば、愚鈍な日本の指導者などを脅し上げて高額な不要兵器を買わせるための方便に過ぎない。

ケーガンの19世紀的な列強乱立時代というイメージも、冷戦ノスタルジアの一つの変形種で、米国の没落を早め墓穴を大きくするだけである。

覇権主義の対立概念は多極主義ではなく多国間主義で、その中心原理は武力抗争ではなくザカリアが示唆した「3C」すなわちconsultatioin, cooperation and even compromiseである。

そんな書生っぽい議論は御免だと?これが国連憲章が規定する国際社会の編成原理としての多国間主義の要諦であり、米国以後の世界は結局、その本道に戻っていくことになる。そのことはまた必要に応じて体系的に論じることにしたい。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2026年4月6日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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