最後は、人間の本能に帰る
巨大な権力構造の話をすると、どうしても暗くなってしまう。半導体を握る者、AIを動かす者、電力を支配する者、税制を設計する者。そうした話を聞くと、個人には何もできないように感じるかもしれない。
けれども、最後に残る希望がある。それは、人間の本能。
人間は、不公平を完全には受け入れられない。理不尽をどこまでも我慢できるわけではない。命が軽く扱われることに、どこかで怒りを覚える。
その感覚が残っている限り、社会はまだ終わっていない、いや、終わらせてはいけない。
おかしいものを、おかしいと感じる。苦しいものを、苦しいと感じる。美しいものを、美しいと感じる。守りたいものを、守りたいと感じる。
この当たり前の感覚が、人間の土台なのだ。
情報に飲み込まれず、権威に怯えず、空気に流されず、自分の中の本能を静かに信じる。そこからしか、本当の意味での民主主義も、自由も、未来も始まらないのだと感じずにおれない。
整体師として、25年間見てきたこと
25年間、施術の場でたくさんの身体と向き合ってきた。
その経験から、ひとつ確信していることがある。
それは、「身体は、嘘をつかない。」ということ。
頭は言い訳をする。「たいしたことない」「気のせいだ」「忙しいから仕方ない」「もう少し我慢すれば治る」。
しかし身体は、そう言いながらも、ちゃんとサインを出し続けている。
肩がこわばっている。首が前に出ている。呼吸が浅い。胃が重い。朝、起き上がるのがつらい。
これらは、単なる疲れではなく、身体が「今の状態はおかしい」と、言葉を持たない声で訴えているのだ。
面白いのは、その「おかしい」という感覚を最初に感知しているのが、頭ではなく身体だということ。
多くの方が、「言われてみれば、ずっと前からなんとなくおかしかった」とおっしゃる。気づいていた。でも、忙しさや思い込みの中で、その感覚を後回しにしてきた。
社会に対しても、同じことが起きているのではないかと思う。
「なんかおかしい」という感覚は、ずっと前からあった。でも、難しすぎて、忙しすぎて、考えても仕方ないと思って、その感覚を脇に置いてきた。
身体の不調も、社会の歪みも、最初のサインはとても静かだ。
大きな音を立てて壊れるのは、ずっと後になってから。
だからこそ、整体師として僕が一番大切にしてきたのは、技術よりも先に、その人自身が自分の身体の声を聞けるようになること、である。本気でそう感じる。
施術で一時的に楽になっても、また同じ使い方をすれば、身体は同じところに戻っていく。
本当の意味での回復は、その人が「自分の身体がどういうサインを出しているか」を感じ取れるようになった時から始まる。
それは、社会との関わり方においても、きっと同じだろう。一つ一つの細胞が器官をつくるように。
難しい制度を全部理解しなくていい。すべての問題に答えを出せなくていい。ただ、「何かおかしい」という感覚を、もう少しだけ大切にしてほしい。
その感覚こそが、身体でいえば「まだ取り返しがつく段階のサイン」なのだから。
巨大な仕組みに飲み込まれそうな時代だからこそ、身体の声に耳を傾けてほしいと強く思う。
それが、25年間施術台の前に立ち続けてきた人間として、今、伝えたいことです。
(メルマガ『施術家・吉田正幸の「ストレス・スルー術」』2026年5月23日号の一部抜粋です)
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