悲しいかな独学主義には限界が……
法案でも報告書でも関連資料でも、自分で読まないと気が済まないというのは立派な心がけであるけれども、やはりその分野の専門家である役人や、党内議論を経験してきた族議員とかに話をよく聞いて、どこが勘所であるかとか、ここがちょっとぼかしたこんな表現になっているのはこれまでにこういう経緯があったことなので心得ておいて貰いたいとか、そういう機微に触れる部分は要領よく掴んでおかなければ国会答弁は上手くこなせない。
例えば、昨年11月7日の「台湾有事」をめぐるやり取りの中で、「〔中国が台湾海峡で行う行動が〕戦艦を使い武力の行使を伴うものであれば、どう考えても〔日本にとっての〕存立危機事態になり〔自衛隊出動があり〕うる」という答弁をして中国との外交関係を事実上、途絶させてしまったが、第1に、この「戦艦」(battleship)とは第2次大戦までは軍艦(warship)一般の中の最大級の主力艦のことを指す特別の用語で今はほぼ死語。彼女が外務・防衛官僚の説明をよく聞いていれば、こんな言葉遣いにはならなかっただろう。それを取り繕うために、日本政府は12月2日付で「戦艦は軍艦一般を指す場合もある」という馬鹿げた閣議決定を発表しなければならなくなった。
第2に、戦艦にせよ軍艦にせよ(今日では実際には中国が保有する3つの空母機動艦隊の一部か全部)が出てきて武力行使をしただけでは日本の存続危機事態にはならず、それで米艦船が撃沈されるなどして台湾周辺の日本向けシーレーンが切断されるといったことがなければそうはならない。日本が軍事攻撃されていないが米軍が攻撃されそれが日本の危機に直結すると判断される場合に安保条約に基づく集団的自衛権を一部解禁して日本も参戦しうるという15年安保法制の「誤読」(重大な成立要件の読み飛ばし)で、中国が身構えるのも当然だが、これも人の話を聞かずに独学で何でもこなせるという思い込みのなせる業である。
推測するに、これは彼女の自信過剰というよりも、経歴の中で米議会の「立法調査官」として働いたと虚偽を書き、それに疑問を投げかけられると「コングレッショナル・フェロー」と言い換えてきた歴史があるので、意地になっているのかも知れない。しかしどちらにしても、本当であればネイティブ並みの英語力のみならず米国の憲法・法律体系についてロースクール卒業並みの知識を試された上で、議会そのものか議員事務所から高給を以て迎えられる仕事で、真偽はその時期の給与証明書を取り寄せれば判明することである。
この記事の著者・高野孟さんのメルマガ









