「やるなら今しかない」高市政権の“突然死”を予防する円安止めにトランプ政権が乗ってきたウラ事情

 

「円安も高金利もイヤ」と反応する米団塊世代の習性

この中で、最も本質的な問題は(8)のAIバブル崩壊です。この問題は非常に複雑な構造をもっており、まず現在は「AI投資ブーム」だけによる経済の牽引は終わっています。依然として投資は続いていますが、「AIの実用化とマネタイズ」という2番目のフェーズに既に入っています。特にB2BのAIについては、有償でもどんどん利用が拡大している中で、ビジネスの競争は激しくなっていますが、投資が回収できるほどのマネタイズになってはいません。

その一方で、本当にAIなりAIエージェントが生産性を向上させるのかという本質的なメリットが立証されたのかというと、そこは疑問がまだまだ残っています。ですが、AIによる人間の仕事の置き換えは進んでおり、一部の大卒労働市場における就職氷河期というのは現実となっています。

そんな中で、AIのビッグ3、つまりSpaceX、OpenAI、Anthropicに加えて、クラシックなシリコンバレーのGAFAMは猛烈なAI投資を続けています。更に、半導体市場もAI関連が主導しており、株価は全体的にかなり買われている状態です。ですから、非常に危ない橋を全員で渡っているという状況があり、一つ何かが崩れると全体がガラガラと崩壊するという状況かもしれないのです。

仮にAIバブルが崩壊するとしたら、まずは株価の暴落に始まり、これに消費の減退、雇用の低迷、そしてクレカ債権の不良化、ノンバンク危機が加わるでしょう。そうなれば2008年のリーマン・ショックの二の舞ですし、仮に全体が崩壊した場合は2008年より事態が悪化するという意見も出始めています。

この1(7)にぶら下がった(8)から(10)の問題というのは、そんなわけでアメリカの現政権にとって喫緊の課題と言えます。その一方で、トランプ氏自身のイデオロギーとしては、これとは別の観点を持っていると言えます。それは、

(11)自分の支持者は、「景気を良くするのには市中金利を下げるべき」だと思っているし、「アメリカの製造業が栄えるにはドル安が良い」と思っている、という強い思い込み。

です。これはもう団塊世代の宿命のようなもので、特に80年代に金利高に苦しんだ自営業の経験、そして同じく80年代に日本の自動車とエレクトロニクスに「やられた」トラウマを背負っているからです。ですから、面倒な経済学とかそういう話ではなく、直感的に「円安はイヤ、高金利はイヤ」という反応をする習性があるわけです。

さて、今回の協調介入に関する日米の事情を整理してみたわけですが、日本側の事情としては比較的分かりやすいと言えます。高市政権が危機を突破して延命するには、確かにこのような道筋しかないのは理解できます。減税と給付を「しない」という判断もあり得ますが、その場合は野党が攻勢に出てくるわけで、ならば「やってしまう」ということになったのでしょう。

その場合に、減税と給付を決めた途端に国際市場から「超円安」を突きつけられては政権は死んでしまいます。ですから、ここを「勝負どころ」と見て、伝家の宝刀である協調介入を、それもトランプ発言まで引き出したというのは、フル仕様の対策投入ということになると思います。

問題は、これに米国がどうして乗ったのかという点です。高市=片山ラインに対して、米国側がどうして協調介入に乗ったのか、こちらは今ひとつスッキリした説明がしにくい部分があります。(7)以降のそれぞれのポイントは深刻であるものの、何かをミスった場合に政権が突然死するというわけではありません。また、現状を総合的に見てみますと、リーマン級の大暴落が「切迫している」とまでは言えません。

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