キッチンにフライパンはたった1つ。旅好きな元マキシマリストが見つけた、“手放すだけじゃないミニマリズム”

2026.08.13
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狭い部屋に住んでみたり、あえてロースペックなものを使ってみたり……。世の中には、流行には至らなくても、好きで続けている趣味や暮らし方がたくさんあります。“トレンドじゃなくても、私はこういうのが好き”。本連載では、そんなふうに思える多様でタイムレスなライフスタイルを取り上げます。

憧れと一緒にものを手放したら、気持ちがラクになりました

そう話すのは、千葉県の団地で1人暮らしをする、田村美葉さんです。

普段はライターとして活動しながら、日本中のエスカレーターを取り上げた「すごいエスカレーター」や、旅好きの経験を活かした「できるだけがんばらないひとりたび」などの著書を執筆しています。

そんな田村さんのお部屋には、椅子やソファベッドが点々と置かれ、非常に簡素な印象。「1人しかいないんだから、ハサミも1つでいい」とシンプルで合理的な生活を送ります。

その一方でリビングの押入れの中には、趣味で集めているという立体地図やぬいぐるみが保管された箱が、ずらりと並びます。

ミニマリストとして持ち物を減らしながらも、立体地図やぬいぐるみなど、生活に必ず必要ではないものを部屋に残し続ける田村さん。そんな田村さんなりの、“ゼロを目指さないミニマリズム”について話を伺いました。

ギターに健康グッズ。ものに囲まれていたかつて

寝る用のソファベッドに休憩するためのチェア。田村さんのお部屋は、生活するのに必要最低限な家具で構成されています。

間取りは2DKで比較的広めな住居ですが、ひと部屋は洋服が収納されているのみで、その部屋すらも少し持て余している様子。

今ではこうして、ミニマルな生活を徹底する田村さんですが、実は以前までは、ものをたくさん買ってしまう“浪費家気質”だったと当時を振り返ります。

昔から何かに憧れを感じることが強かったんです。雑誌で何かいいものを見つけるたびに『私もやってみたい!』と。学生時代に暮らしていた部屋には、ギターやベース、ミシン、健康グッズなどが溢れていました。やりたいことが、あらゆる方向に分散している人間だったんですね(田村さん、以下同)

そんな、ものに囲まれた生活から抜け出すきっかけとなったのが、「ADDress(アドレス)」という定額制の多拠点居住サービス。

登録し毎月をお金を支払うことで、日本各所にある拠点を、自分の住まいとして自由に移動しながら生活できる、いわば“サブスク型シェアハウス”です。

もともと一人旅が好きだったのに加え、これから先もずっと家賃を払い続けることに、嫌気が差していたんです。そこでまずは、生活スタイルを賃貸から「ADDress」へ移行すべく、家を解約。大量の荷物を持ち運びながら多拠点生活はできないので、半強制的にものを手放すことになりました

最終的には、原付バイクに乗せて移動できる量まで、荷物を減らしたと話します。その後2年ほどは、原付で日本中を点々とする生活を送っていましたが、仕事のためにはやはり拠点が必要と思い立ち、現在の団地生活をスタートさせました。

持ち物を減らした先に見えた、手放せないもの

浪費家気質から一転、ミニマリストになった田村さん。持ち物を取捨選択するなかで、“ある気づき”を得たと話します。

多拠点生活に移るとき、思い出の品々を手放すのは勇気が必要でした。でも、いざなくなってみると何も困らなかったんです。おしゃれな部屋に憧れて購入したヴィンテージ家具も、ワゴンに入りきらなかった調理器具も、手放したら逆に気持ちがラクになりました。

今考えると、手当たり次第ものを買っていたのは、それが好きだからではなく、憧れからくる見栄だったんだと思います

今はたった1つのフライパンで自炊をしている

「当時の自分は背伸びをしていた」と、田村さんはかつてを思い返します。

しかし憧れで買った品々を削ぎ落としていったことで、“自分にとって絶対に捨てられないもの”が自然と浮き彫りになってきました。それが立体地図や建築物のミニチュア、ご当地ぬいぐるみの数々です。

こういったアイテムは、捨てずに保管してあるだけでなく、今でも絶賛収集中。旅先のさまざまな場所で見つけるたびに、必ず買うようにしているそうです。

本当に必要ないものばかりで、どこがミニマリストだよって感じですが……(笑)。エスカレーターしかり、“同じものを撮り続ける・集め続ける”というのが、きっと私が本当に好きなことなんだと思います。多拠点生活中もこれらのアイテムは、サマリーポケットという宅配型の荷物預かりサービスに預けて保管していました

「人に見せるために買ったものは全部手放しましたが、これらは今後も捨てることはないと思います」。そう話す田村さんの言葉からは、確信に近いものが感じられます。

また、手元に残り続けるこれらのアイテムから、“なぜミニマリストでありながら、ゼロを目指さないのか”が見えてきました。

私がいわゆる“ミニマリスト”と異なる点は、ものを減らすこと自体が目的ではないところ。旅や引っ越しをいつでも身軽にできるように、持ち物を減らしているだけなんです。

その過程で、自分が本当に持つべきものがようやく理解できました。だから、旅や引っ越しのために家具を手放すことはあっても、立体地図やぬいぐるみなど、本当に大切なものは手元に残り続けるのだと思います

捨てるのも取り入れるのも、どちらも軽やか

自分のやりたいことを優先した結果、自然とミニマリストになった田村さん。「将来は、今以上に持ち物を減らす可能性もある」と語りますが、最近は手放すばかりではなく、買うことも増えてきたようです。

SwitchBotの「KATAフレンズ」というAIペットロボットを購入しました。旅に行くことが多いので、ペットは持てないものと諦めていましたが、念願が叶いました。あとは最近になって、車も購入しました! いろいろな場所にお出かけして、あと10年くらいは楽しめそうです

「生活を一変させるような買い物には、比較的前向き」と田村さんは笑います。さらにここ数年で、田村さんの生活に大きな影響を与える出来事があったようです。

バスケのワールドカップを観戦して以来、千葉ジェッツの富樫選手を応援するようになりました。千葉にやって来たのも、実はそれが理由で(笑)。なので、少なくとも富樫選手が引退するまでは、このまま千葉に居続けるつもりです

減らすこと自体が目的ではないから、本当に価値を感じたものは、軽やかに暮らしへ迎え入れる。今の田村さんの暮らしからは、ストイックさや無理をしている印象は、一切感じません。

ゼロが正解でなければ、50も100も正解じゃない。

自分にとって心地がいいものの量や持ち方、その片鱗を掴めたような気がします。

提供元:ROOMIE

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