トランプとイランの報復合戦はなぜ止まらないのか?最後の調停官・島田久仁彦が説く「終わりが見えているようで見えていない戦争」の正体

 

【2.核レンタル-誰の力を借りれば、安全になるのか】

ここまでの話には、一つの共通点があります。どの国も、自分だけの力で相手を抑え込もうとしているわけではありません。誰かの力を借り、同盟を広げ、相手にここから先は危ないと思わせようとしているのです。

8月、サウジアラビア、トルコ、パキスタンが共同防衛協定を結びました。サウジの聖地メッカで首脳が署名したことから、メッカ協定と呼ばれています。

1カ国への攻撃を3カ国への攻撃とみなすという集団防衛の枠組みそのものは、目新しいものではありません。しかも8月31日には、協定を実際に動かすための戦略・政治・防衛委員会がイスタンブールで初会合を開き、3カ国は集団抑止と防衛の信頼性を高めるための制度化に踏み出しています。単なる署名式で終わった話ではないのです。

私はこれを、あえて「核レンタル」という言葉で考えてみたいと思います。なぜならば、この中でパキスタンが核兵器保有国だからです。

もちろん、協定にパキスタンの核抑止力がサウジやトルコに提供されると明記されているわけではありません。むしろ、そこが重要なのです。

英国際戦略研究所(IISS)は、パキスタンが両国に拡大核抑止を提供するかどうかは未解決の問題だと評価しています。核の傘という言葉が出ないまま、核保有国と非保有国が一つの防衛条約に並ぶという、この曖昧さ自体が、今の中東の安全保障が置かれている状況を物語っています。

問題は、誰かの力を借りることそのものではありません。その力を、いざというとき本当に使ってもらえると相手が信じるかどうかです。

同じ発想は欧州にもあります。フランスのマクロン大統領は3月、自国の核戦力を欧州全体の安全保障にも役立てる方針を打ち出しました。ただし、これは核弾頭そのものを他国に配備するという話ではありません。フランスの戦略航空戦力の一部を欧州の同盟国に一時展開したり、核抑止をめぐる共同演習を行ったりする構想で、核使用の決定権はあくまでフランスが握ったままです。

ちなみに、英国、ドイツ、ポーランド、オランダ、ベルギー、ギリシャ、スウェーデン、デンマークの8カ国が、この構想への関与に関心を示しています。

自前で持たない力を借りて安全を確保するという発想そのものは、決して新しいものではありません。日本や韓国も、米国の核抑止力に依存する形で自国の安全保障を成り立たせています。

ただ、借りた力には一つの弱点があります。「いざというとき、本当に使ってもらえるのか」という問題です。

核保有国が守る相手を増やせば増やすほど、抑止力は薄く伸ばされ、本当に発動されるのかという疑念が膨らんでいきます。この疑念こそが、皮肉にも借りる側を独自の核武装へと向かわせる引き金になり得るのです。

米ランド研究所のスコット・ハロルド上級政治学者は、この状況について、「核保有国を含めた多くの国々が対立に引き込まれ、第一次世界大戦のような紛争の連鎖を生む危険が高まる」と警告しています。

では、すでに核兵器を持っているロシアはどうでしょうか。

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