トランプは本気でカナダを「米国の51番目の州」にするのか?グリーンランドへの執念から見えてくる“別の景色”

 

第一には、かねてからレアアースなど地下資源の宝庫とされるグリーンランドから、ロシアや中国の軍事的・経済的影響力を排除することが大きな目的の一つであることは明らかです。

グリーンランドの地下資源を米国が抑えることができれば、現在、世界のレアアース供給網で圧倒的な存在感を持つ中国を牽制するという意味で、米国の国益に寄与するのみならず、グローバルサプライチェーンのバランスを保つ上では、国際社会にとっても悪い話ではありません。

そして第二には、トランプ氏は、やはりかねてから口にしているカナダを米国の51番目の州にするということを本気で考えているのではないでしょうか。

カナダの首相がマーク・カーニー氏に代わってから、米国とカナダの対立が目立つようになりましたが、ついにカーニー首相はEUに近付き、EUの「準加盟国」ともいえる新たな関係を構築することに意欲を見せています。これに対してトランプ氏は露骨に不快感を示しています。

私たち日本人からすると、カナダやオーストラリアは、同じ英語圏の国として(カナダにはフランス語圏もありますが)、もともと親米で、国民性などは米国に酷似している印象を持っています。実際にこれらの国々を訪れてみても、私の感覚では、米国にいるのとさして変わらない感覚です。

しかしながら、歴史を遡ると、米国がかつて英国と戦争をして独立を勝ち取った共和国であるのに対して、カナダやオーストラリアは大英帝国の自治領として発展し、今でも英国王と同一人物である国王を国家元首とする立憲君主国です。

ここから先は私自身の仮説ですが、やはりこの違いは非常に大きく、長いことこれらの国々は同盟国として親密な関係を保ってきたものの、本音のところでは、英国および英連邦の国々と米国との間には、積年のわだかまりというか、昔の敵対国としての感情が根強く残っているのではないでしょうか。

トランプ氏のグリーンランドへのアプローチを、個別の思いつきとしてではなく、トランプ氏がこだわる西半球における米国の圧倒的優位を確立しようとする一つの地政学的構想として眺めると、別の景色が見えてきます。先日は、オンタリオ湖を米国内では「アメリカ湖」と名称変更するなどの動きもありましたが、今回のグリーンランドとの協定も、カナダ支配に向けた布石なのではないかと感じます。皆さんはどう思いますか?

※ 本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2026年9月25日号の一部抜粋です。このほか、「今週のメインコラム」や「読者の質問に答えます!」、「スタッフ“イギー”のつぶやき」など、レギュラーコーナーも充実。この機会にぜひご登録をご検討ください。

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image by: X(@The White House)

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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