【未来地図】「ウェブサイトを持たないウェブメディア」が登場

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この流れに最適化しようとまず動いたのが、今回のNowThisの「英断」ということになるのではないかと思います。今後はこれに追随してくるメディアがたくさん出てくることが予想されます。ちなみにイーベイ創業者のピエール・オミディアが始めた新興メディアのファーストルックは、Reported.lyというメディアをローンチしていますが、これはブログサービスのMediumの上でのみ配信されていて、自社のサイトを持たずにプラットフォームに完全依拠したメディアであり、NowThisと同じ方向と言えるでしょう。

Reported.ly

ただひとつ疑念としてあるのは、マネタイズは本当に可能なのか?ということでしょう。先述しているように、NowThisのような動画を自社制作している場合は今後のマネタイズは、フェイスブックなどのプラットフォームに動画を提供し、そこで発生する広告売上をフェイスブックとで分け合うというモデルになるでしょう。これはユーチューブがもうだいぶ前からやっているビジネスモデルで、最近注目されているYouTuberと呼ばれるビデオブロガーたちはこのモデルで大金を稼いでいるんですね。Snapchatも、Discoverという新しいコンテンツ配信機能でコンテンツ企業と組んで同じことを始めています。Snapchatは単なるメッセージアプリから、これによってメディア配信プラットフォームへと脱皮しようとしているということが、以下のマッシャブルの記事では指摘されています。

Snapchat breaks into media with Discover

しかしこのようなプラットフォームとの広告収益シェアモデルは、NowThis側が自社のコンテンツやデータをコントロールできなくなってしまう危険性もはらんでいると考えるべきでしょう。ユーチューブの仕組みがちょっと変わるだけでYouTuberの収入が激減し、大騒ぎになるようなことが起きていますが、あのような事態が予測できるということです。

となるとコンテンツ側が考えるべきは、プラットフォーム側の広告モデルに全面依存することではありません。プラットフォーム側の広告モデルだけでなく、コンテンツ自体の価値で広告効果を勝負できるネイティブ広告モデルをきちんと打ち立てていくことが、プラットフォーム依存に陥らないための重要な施策になってくるのだと思います。プラットフォームがシステムを変更したり、あるいはプラットフォームの栄枯盛衰があってそこからの収益がなくなったとしても、プラットフォームをまたぐ形で読者との間にエンゲージメント(つながり)を形成しておくというのが、たいへん重要なのです。

「自社サイトを持たないメディア」では、もはやページビューは測りようもありません。今後は指標はページビューではなく、主軸としてはエンゲージメントやSNSでのシェア数に変わっていき、これがネイティブ広告を後押しする。そしてコンテンツを各種のプラットフォーム上で展開し、特定のプラットフォームに単独依拠する危険性はとらない、というようなところに落ち着いていくのではないでしょうか。

 

『佐々木俊尚の未来地図レポート』第334号より一部抜粋

著者/佐々木俊尚(ジャーナリスト)
1961年生まれ。早稲田大政経学部中退。1988年毎日新聞社入社、1999年アスキーに移籍。2003年退職し、フリージャーナリストとして主にIT分野を取材している。博覧強記さかつ群を抜く情報取集能力がいかんなく発揮されたメルマガはメインの特集はもちろん、読むべき記事を紹介するキュレーションも超ユースフル。
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