【未来地図】「ウェブサイトを持たないウェブメディア」が登場

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従来のネットメディアは、フェイスブックやツイッターで自社記事を紹介し、そこから読者にリンクをたどってもらって自社サイトに来てもらうというのが一般的な手法でした。なぜ自社サイトに来てもらう必要があるかと言えば、ビジネスモデルがグーグルのAdSenseなどのディスプレイ広告であるからです。

2000年代ぐらいには、読者の動線の主軸は検索エンジンとポータルサイトだったので、いかに検索エンジンで検索してもらうかという施策(SEO、検索エンジン最適化ですね)と、ポータルサイトへの働きかけでした。しかし2000年代終わりごろからはフェイスブックやツイッターなどのSNSからの流入が中心になり、このためどのメディアもこうしたSNSでのフォロワー集めやリツイートを増やすことに全力を挙げるようになってきました。デバイスがPCからスマートフォンに移行してきて、この傾向はさらに加速しています。

昨年までバズフィードのCRO(Chief Revenue Officer)を務め、いまはVCのアンドリーセン・ホロヴィッツに移っているAndy Wiedlinは、「すべてのアクションはフェイスブックやツイッターなどソーシャルメディアのストリーム(情報の流れ)に変わっている」という言葉を使っています。ため池のようにコンテンツが保存してあるところに人々がコンテンツを見に行くのではなく、川の流れのようなところに人々がいて、人々をコンテンツという波が洗っていくイメージでしょうか。ため池で待っていても人々は情報を見にきてくれるわけではなく、川に行って人々に向けて情報を流さなければなりません。

であれば、NowThisが「もはや自社サイトに来てもらう必要はない」と、読者が日ごろ滞在しているフェイスブックやツイッター、インスタグラム、ヴァインといったソーシャルプラットフォーム上でダイレクトに動画を楽しんでもらうという手法を採用したのも当然の進化の方向性ということになるでしょう。

フェイスブックの側も、リンクを貼って外部のサイトに誘導する投稿よりも、フェイスブック内だけで完結する投稿の方を優遇し、ランクを高くして読者の目に触れやすいようなことをしています。これによって発生する広告売上をフェイスブックとコンテンツ提供者との間でレベニューシェアすることで、フェイスブックの中で動画を見せた方が儲けが得やすいのだ、というのがフェイスブックのアピール点になっているんですね。

フェイスブックのこうした動きに合わせるように、ツイッターも独自の埋め込み動画サービスを最近になって開始していますし、インスタグラムは15秒動画機能を持ち、スナップチャットも同じ方向へと進んでいます。これからはモバイルデバイス上で動画を見るというのが非常に大きなコンテンツ市場になってくることが予想され、このためにプラットフォーム各社は自社サイト内だけで動画視聴を完結させる方向へと大きく舵を切っているというのが現状の大きな動きと言えるでしょう。

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