今年8月、中国人男性が靖国神社で墨汁とみられる液体をまいたとして逮捕されましたが、明治神宮では中国人観光客が香港人の死を願う絵馬を大量に掲示、そのモラルを疑う声が各所から上がっています。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、他国の文化や宗教に無知な中国人が増加している理由を記しています。
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年9月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【中国】明治神宮に大量発生した香港批判の絵馬に見る、中国のソフトパワーのなさ
今年8月中旬、明治神宮に、台湾や香港の独立運動をコキおろし、香港人の死を願い、「中国はひとつ」などと書いた絵馬が、大量に絵馬掛所に掛けられていたことが発覚しました。
このことは、台湾や香港でも大きく報じられ、多くの民衆の怒りを買いました。日本ではあまり報じられませんでしたが、ツイッターなどではその様子が写真付きで拡散されていました。
もともと無神論者、あるいは現世利益を与えてくれる神しか尊奉しない中国人が、日本の神聖な場所で、あろうことか人の不幸を神さまにお願いするのですから、これ以上の罰当たりな行為はありません。しかも明治神宮は明治天皇をお祀りする場所ですから、なおさらです。
もっとも、無神論者だから、このような非常識な願いを書けるのかもしれません。冒頭のニュースは、これに対抗するかのように、香港の自由・民主主義復活と、行政長官・林鄭月娥(キャリー・ラム)の辞任を願う内容の絵馬が明治神宮に掛けられていた、ということを報じる台湾メディア「自由時報」のものです。
香港側のメッセージが書かれた絵馬が、これ以外にあるのかどうかわかりませんが、報じられたものを見る限り、中国人の書いた絵馬よりよほど抑制的です。やはりイギリス統治時代があるため、宗教文化がある程度根付いているからでしょう。
ただ、中国人の無神経な絵馬が発端となったとはいえ、やはり明治神宮は日本人にとって重要な宗教施設ですから、ここが中国人と香港人・台湾人の対立・自己主張の場所になるのは望ましくありません。
宗教施設で罰当たりな行為をしてはいけないということは、イギリス人統治や日本人統治の時代を経験した香港人や台湾人には理解できるのですが、中国人にはなかなか理解できないところが悩ましい点です。だから世界中の宗教的遺産物で中国人の落書きが問題になっているわけです。
ただし、このように他国の文化や宗教に無知な中国人を育てているのが、中国共産党であることも事実です。現在の中国はキリスト教への弾圧も強めており、クリスマスも祝えなくなりつつあります。
もちろん弾圧されているのはキリスト教だけではなく、イスラム教も仏教、道教も弾圧され、モスクや寺院、仏像、道観などがどんどん壊されています。いわゆる「宗教の中国化」ですが、そのような状態を目の当たりにして、中国人の宗教への理解が深まるはずがありません。中国共産党同様、破壊しても侮辱してもいい対象としか見ないでしょう。
いま、香港では、自由や民主主義を求めるメッセージを付箋に書き込んで壁に貼り付ける「レノン・ウォール」が町中に登場しています。これは、1980年代のチェコスロバキアで、民主化を求める若者たちがジョン・レノンの歌詞などのメッセージを町の壁に書いたものがモデルになっています。中国語では「連儂牆」と書きます。
香港での広がりを受けて、台湾でも香港との連帯を示そうと「レノン・ウォール」をつくる動きが加速しています。
冒頭の「自由時報」の記事も、香港人の絵馬が登場したことで、「レノン・ウォールがやってきた」と報じたものですが、繰り返しになりますが、やはり明治神宮という場所柄、ここがレノン・ウォール化してしまうのは、本来、ふさわしいことではないでしょう。このような流れが他の神社や寺社に広がらないことを望みます。
ただし、中国の圧政・暴政による民主主義の危機について、日本人、台湾人、香港人がもっと連帯し、共通認識を深めることは必要です。中国の覇権主義、統一主義を阻止する点で、まさに自国の利益に一致しているからです。