10月4日朝、北朝鮮が発射したミサイルが日本の上空を通過する可能性があると、5年ぶりにJアラート(全国瞬時警報システム)が発動。警報の不具合などもありひと騒動となりました。9月末から立て続けに6回もミサイルを発射する意図はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』で、国際政治経済学者の浜田和幸さんは、米韓合同軍事演習が5年ぶりに自身を名指しし「斬首作戦」と銘打たれたことで金正恩を刺激していると分析。「聞く耳を持つ」と言う岸田首相に対しては、アメリカとの協議だけではなく、金正恩との直接対話を勧めています。
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北朝鮮がミサイル発射を繰り返すワケ
ぶっちゃけ、北朝鮮が日本上空を通過する弾道ミサイルを発射したことで日本もアメリカもピョンヤンを非難する一方ですが、なぜ北朝鮮は「危険で無謀な行動」を繰り返すのでしょうか。その点を明確にしない限り、朝鮮半島でもアジアでも平和は確保されません。
岸田総理はバイデン大統領と電話会談し、ミサイル発射を非難し、日米同盟の抑止力、対処力を強化することで一致したとのこと。しかし、アメリカの意見を聞くだけでは片手落ちです。自らを「聞く力」の持ち主と事あるごとに自慢するのであれば、ミサイル発射命令を下している金正恩の考えも聞いてみてはどうでしょうか。
あのトランプ前大統領は何度も金正恩総書記と対面していたものです。認知症が疑われるバイデン大統領の意味不明な発言に耳を傾けるのも結構ですが、「嫌な相手」とも向き合うことが国家指導者には求められると思います。
もし、金正恩総書記と直接対話することになれば、彼の脳裏に去来する「対米不信」の根の深さに思い至るのではないでしょうか。日本ではほとんど報道されていませんが、アメリカ主導による韓国や日本を巻き込んだ北朝鮮を想定した共同軍事演習が最近頻繁に行われています。
特に、本年8月から9月にかけて実施された米韓合同軍事演習は「金正恩の斬首作戦」と銘打って行われたものです。実は、前回、米韓が行った「斬首作戦」は2017年でした。それ以降は北朝鮮も核実験を中止しています。
ところが、今回、米韓両軍が再び「金正恩の頸動脈を切り裂く」と明確な軍事目標を打ち出したわけで、北朝鮮も黙っているわけにはいかなかったはずです。米韓両軍は「CPX」と呼ばれる3段階の軍事演習を実行しています。
第1段階は北朝鮮のミサイル発射基地の確認とミサイル能力の検証です。第2段階は北朝鮮への大規模な攻撃で、特殊部隊による金正恩を含む北朝鮮指導部の抹殺。第3段階は北朝鮮による反撃への対応となります。
アメリカ軍は本年1月、ドローン兵器によってイランのソレイマニ司令官を暗殺しました。そうした事例を見せられ、金正恩総書記とすればアメリカの攻撃を食い止めるにはグアムやハワイをも射程に入れた弾道ミサイルや核保有国としての存在感をアピールせざるを得ない状況に追い込まれたとも言えそうです。
しかも、金正恩総書記はロシアのプーチン大統領とも中国の習近平国家主席とも「団結の手紙」を交換しています。ぶっちゃけ、3代目の“ぼんぼん”のようにも見えますが、意味不明発言を繰り返すどこかの国家指導者より強かなことに注目すべきでしょう。
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