経済の活性化が「パワーカップル頼み」の情けない日本政府。我が国は本当にそれで救われるのか?

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最近、共働き夫婦ともに年収1000万円以上の「パワーカップル」という言葉を耳にする機会が増えました。「ニュースステーション」初代気象予報士にして社会学者の河合薫さんは、パワーカップルに関する最近の記事に対して違和感を覚えたといいます。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイー河合薫の『社会の窓』』で今回、その違和感の理由を綴り、日本社会が抱える「格差」という大きな問題と今後の課題について考えています。

パワーカップルは救世主か?

9月7日(日曜日)、日経新聞一面の「チャートは語る」のコーナーにちょっとばかり違和感を抱く記事が掲載されました。

タイトルは「パワーカップルまだ微力」。

夫婦ともに1000万円以上稼ぐ家庭=パワーカップルの現状と、国の期待について書かれたものです。

記事によると、大企業の賃上げと共働きの増加を背景に、パワーカップルはこの10年間で倍の11万世帯に達しました。

しかし、全世帯に占める割合は1%未満とまだ少なく、個人消費の牽引役となるには力不足です。高収入の世帯は家事の外注など消費意欲が高い一方で、貯蓄志向が依然として高く、個人消費全体は伸び悩んでいるそうです。

また、内閣府の調査では「毎日の生活を充実させて楽しむ」よりも「貯蓄や投資など将来に備える」と答える割合が60歳未満の層で66%を占めるなど「使うより貯める」意識がコロナ禍以降、広い世代で続いていることもわかりました。

そこで国が期待するのが「パワーカップル」の増加です。

パワーカップルの特徴は、たくさん働き、たくさんお金を使うこと。こういった高所得層を増やすことで、景気の底上げを狙っているのです。

パワーカップルは昔のDINKSとは異なり、子供もいます。

彼らは貯蓄を重視する一方で、子供の保育園の送迎や家事代サービスを利用し月10万円超を支出。平日の夕飯は総菜宅配サービス、掃除は月2回、業者に頼むなど、金を使うことで「自分たちの時間」を有意義にすることに価値を見出しているそうです。

それを実現するには旧来の慣行の再点検も欠かせないと記事では指摘。それは「夫婦ともに働き続け、稼ぎ続けられる環境」の実現で、具体的には専業主婦を前提とした「転勤制度の見直し」などです。

・・・なるほど。言いたいことはわかります。

念の為断っておきますが、記事の内容を批判する気は全くありません。

しかし、今の日本には純金融資産が1億円を超える富裕層が「約148万5,000世帯」も存在する一方で、所得が集団の中央値の半分にあたる貧困線に届かない人の割合を指す「相対的貧困率」は15.4%で、30年前より1.9ポイントも高い状態が続いています。つまり、格差は拡大し続けている。その格差をさらに広げるような政策にどのような価値があるのか? それで国は本当に豊かになるのでしょうか。

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