「国連の機能不全」を招いた“戦犯”は誰か?イスラエル絡みの決議案に拒否権を発動しまくる米トランプが国連批判の噴飯

New,York,,Usa,-,September,22,,2025:,Emmanuel,Macron,Speaks
 

もはやその任が果たせなくなったと言われ始めて久しい国連安保理。事実、ウクライナ戦争やガザでのジェノサイドを前に無力さを晒しているのが現状です。果たして国連は、存在意義を完全に失ってしまったのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、国連が抱える限界と可能性について分析・解説。さらに最新の国際情勢を踏まえ、日本を含む世界各国に求められる現実的な対応を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:紛争調停役としての国連は役目を終えたのか?

不要論さえ囁かれる現実。紛争調停役としての国連は役目を終えたのか?

「国連は現在、果たすべき役割を果たしているか?」

石破総理が演説の冒頭で問うた内容です。

今年もまたNYの国連本部で国連総会ウィークが始まりました。

国連事務総長による演説に始まり、ホスト国であるアメリカ合衆国のトランプ大統領も演説を行いましたが、「国連は機能不全に陥った」と痛烈に批判し、アメリカ合衆国が音頭を取り、“第2次世界大戦のような戦争が二度と起こらないように、国際的な協調と法の支配に基づく国際秩序が必要”として創立された国連と国連主導の多国間主義に対して背を向ける姿勢を鮮明にしました。

国連創設から80年の節目を迎える今年の総会は、初めから協調よりも対立が目立ち、まさに複数の国際秩序が乱立するマルチ・オーダー時代(multiple orders)の世界へと変わっていく様子を鮮明にしたように見えます。

国連総会と並行して、気候変動問題を首脳級で話し合うClimate Weekも同時に開催され、今年ブラジルで開催されるCOP30を前に、気候変動問題に対する世界の協調の必要性と、各国による削減努力の強化、および激しさを増す気候変動による悪影響に対する適応の必要性が喫緊の課題として挙げられました。

ここ数年、気候変動対策、特に適応に対する資金の著しい拡大の必要性と、先進国の責任を問う声の高まりが、交渉をハイジャックしており、今後、国際協調枠組みの下で気候変動問題と言う世界的な課題を解決できるのか、運命を決める瀬戸際に差し掛かっているように思われます。

まさに国連を中心とした国際的な枠組みは限界を迎えているのかもしれません。

安全保障問題、特に紛争の調停という観点からは、イスラエルによるガザ侵攻と人道危機の深化を受けて、各国がガザにおける即時停戦と人道支援の再開、そして人質の解放を強く求める決議案を安全保障理事会に提出していますが、今年に入ってすでに安全保障理事会常任理事国であるアメリカが6度にわたって拒否権を発動し、トランプ大統領が非難する機能不全を他ならぬアメリカが招いていると言っても過言ではありません。

アメリカがイスラエル絡みの決議を悉く葬り去るのは、何も新しいトレンドではなく、イスラエル建国以来ずっと続く姿勢ですが、明らかな人道危機の発生と紛争の激化を目の当たりにしながらも、伝家の宝刀とも言える拒否権を連発するのは、国連を生み出した功労者たるアメリカが行うべきではないと感じています。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • 「国連の機能不全」を招いた“戦犯”は誰か?イスラエル絡みの決議案に拒否権を発動しまくる米トランプが国連批判の噴飯
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け