企業で重大な事故や問題が発生したとき、社会への説明の場となるのが「お詫び会見」です。しかし、話の内容よりも表情や態度が印象の9割以上を占めるという現実を、多くの経営者は知りません。たった一言の失言や一瞬の不誠実な表情が、企業の信頼を崩すこともあります。今回のメルマガ『食品工場の工場長の仕事』では、著者の河岸宏和さんが、お詫び会見で企業が絶対に知っておくべき危機管理の鉄則を解説します。
お詫び会見について。第一印象で会見の評価は決まる
企業で事故や重大な問題が発生した場合、社会に対して説明を行う場が、お詫び会見(記者会見)です。
この会見では、どのような質問をされても、テレビカメラの前では冷静に対応することが非常に重要になります。
企業として把握している情報は、
隠さない
ごまかさない
後出ししない
という姿勢で、出来る限り全ての情報を公開することが重要です。
もし後から新しい事実が出てくると、「最初から隠していたのではないか」という疑いを持たれてしまいます。
企業への信頼は、こうした小さな疑念から大きく崩れてしまうのです。
見た目の印象が会見の評価を左右する
記者会見では、社長や責任者の発言内容だけでなく、見た目の印象が大きく影響します。
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンの研究では、人が相手の印象を判断する割合は次のようになると言われています。
視覚情報(表情・姿勢など) 55%
声の調子(話し方) 38%
話の内容 7%
これを一般にメラビアンの法則と呼びます。
つまり、人は話の内容よりも表情・態度・声の調子から印象を判断しているということです。
テレビを通して会見を見る人の多くは、「この人は本当のことを言っているのか」「この会社を信じていいのか」という視点で会見を見ています。
そのため、無表情・不機嫌そうな顔・不誠実に見える態度があるだけで、会見の内容がどれだけ正しくても、会社への信頼は大きく下がってしまいます。
テレビでは一瞬の失言が繰り返される
記者会見を会場で最初から最後まで見ている人は、実はほとんどいません。多くの人はテレビニュースやインターネット動画を通して会見を見ることになります。
テレビでは、失言・不適切な表情・態度の悪い瞬間が繰り返し編集されて放送されることになります。
たった一言の失言や、ほんの一瞬の表情が、ニュース番組・ワイドショー・SNSなどで何度も繰り返し流されることになります。その結果、企業のイメージは一瞬で悪化してしまうのです。
テレビカメラの前で、強い照明を浴びながら話す経験は、ほとんどの人にとって初めてのことです。緊張やプレッシャーの中で、記者の厳しい質問・被害者の存在・社会からの批判に向き合うのは、想像以上に難しいものです。
そのため最近では、企業向けに記者会見の模擬訓練や危機管理広報トレーニングを行うコンサルタント会社もあります。本番で冷静に対応するためには、事前の訓練が必要なのです。
日本の企業危機管理の中で有名な事例として、雪印乳業の記者会見があります。この会見では、責任者の発言や態度が大きく批判され、企業イメージの悪化を招きました。
記者の中には、企業がどこまで説明するか、責任者が失言しないかを厳しく見ている人もいます。そのため、会見が始まる前・会見の最中・会見が終わった後まで、気を抜かない姿勢が必要になります。
全ての情報を出し切ることが最重要
テレビの前の消費者は、「この会社は本当のことを言っているのか」「何か隠しているのではないか」という疑問を持ちながら会見を見ています。
話している人が本当に申し訳ないと思っているのか、ただその場を乗り切ろうとしているのかは、意外と画面から伝わるものです。
報道記者は質問のプロです。相手が何かを隠している場合、その違和感をすぐに感じ取ります。そして、隠している事実があると感じた場合は、さらに質問を重ねてきます。
結果として、隠そうとしたことほど、後から問題になるケースが多いのです。
記者を敵にせず、パートナーと考える
お詫び会見の目的は、企業を守ることではありません。本来の目的は、被害拡大を防ぐ・消費者に正しい情報を伝える・問題商品を回収することです。
そのためには、報道機関の協力が必要になります。記者を敵と考えるのではなく、正しい情報を広く伝えてもらうパートナーとして対応することが大切です。
過去には、エレベーター事故で死亡者が出た際、外国メーカーの責任者が最初の記者会見で謝罪を行わなかった事例がありました。その結果、日本の社会から強い批判を受け、しばらくの間、日本での発注が止まったと言われています。
事故そのものよりも、企業の対応が社会からの信頼を大きく左右することを示す例と言えるでしょう。
テレビでお詫び会見を見るとき、「この会社はどう対応しているか」「責任者は誠実に説明しているか」という視点で見ることが多いと思います。
しかし、もし自分の会社で同じ問題が起きた場合、自分ならどう対応するでしょうか。何を説明するか・誰が会見するか・どこまで情報を公開するか——こうしたことを、普段から考えておくことが危機管理なのです。
image by: Shutterstock.com









