安倍政権のイメージ操作か。北朝鮮が打ち上げたのは衛星ロケットだった

 

ランド研究所アナリストの同様の見解

米国防総省に直結するシンクタンク=ランド・コーポレーションの上級軍事アナリストであるブルース・ベネットも7日付ブログで似たような見解を述べている。

今回のロケット/ミサイルは有効搭載荷重500kg(核弾頭の重量に近い)、射程1万3,000km(全米をカバー)と言われており、精査は必要だが、前回に比べて大きく能力が向上している。

しかし他方では、これは本当のICBMではない。巨大な固定発射塔に何日もかけて据え付けるのでは、紛争時には簡単に破壊されてしまう。

北朝鮮はK-8という移動式のICBMを開発してきたが、それは一度も実験されていない。さらに、核弾頭の小型化を達成していたとしても、それを大気圏に再突入させて地上の目標に到達させるには、弾頭とミサイルを超高温に耐えるようにするのをはじめ、いくつもの課題がある。

この発射は北朝鮮が長距離ミサイルのいくつかの性能をマスターする助けにはなるだろうが、すでに米国に到達しうる実用に足る核弾頭付きのICBMを持つに至ったとは思えない……。

田岡やベネットの見方が専門家の見解として国際水準である。

PAC3を沖縄に配備した自衛隊の虚偽

そういう訳で、今回のテポドン2改の発射は何ら日本にとっての軍事的脅威ではない。政府とマスコミが結託して、「北朝鮮は怖い」という印象を宣布して、安倍晋三首相の決り文句「わが国をめぐる安全保障環境はますます厳しくなっている」という虚偽認識を煽ったのである。

例えば、2月9日付朝日新聞を見ると、1面トップで「北朝鮮制裁、米中なお溝」、2面でそれを受けて「慎重な中国、急ぐ日米韓/独自措置探る日本、『拉致』も考慮」、3面で「日韓、軍事情報共有へ調整/軍事情報包括保護協定締結へ」、9面で「韓国、強い制裁要請/外相、きょう国連へ」──と、まるで北朝鮮と戦争を始めようかという勢いの大きな記事が立て続けに並んでいて、その9面の下の方で「地球周回軌道に2つの物体乗る」との米国での報道をわずか17行の小さな記事で目立たないように載せている。普通ならこれを1面トップに持って来て、「北のロケットは人工衛星打ち上げ/軌道に乗せることに成功か?」とでも打つのが本当ではないか。朝日でさえも無自覚のまま官邸の意向に従って、昔と同様の「大本営発表」垂れ流しに堕しているのが不気味である。

田岡によると、北からの潜在的脅威として直視しなければならないのは、テポドン2ではなくて、小型の「ムスダンである。旧ソ連のSSN6を基礎に開発したと言われる射程3,000キロのこのミサイルは、自走式の発射台に載せて北部山岳地帯のトンネルで、液体燃料を詰めたまま常時待機して、蓋を開けて外に引き出したら10分程度で発射可能だという。それをどう防ぐかという話ならともかく、衛星打ちあげ以外には使えそうもないテポドン2で大騒ぎをするというのは「軍事知識の不足を天下に晒しているだけなのである。

とりわけ滑稽なのは自衛隊で、沖縄の宮古島や石垣島まで迎撃用ミサイルPAC3を運んで「撃ち落とす」と意気込んで見せた。

しかし、第1に、そもそもこれは衛星打ち上げロケットであって、順調に飛ぶのであれば、沖縄上空を通過するだけで、迎撃態勢をとる必要がない

第2に、しかし故障や事故で本体や部品が予定から外れて途中落下する危険があるというのだが、そういう偶発的な出来事を瞬時に察知してそれを首尾よく撃ち落とす能力は、残念ながら、イージス艦もPAC3部隊も備えていない。

第3に、ではなぜPAC3などを送り込んでその雄々しき映像をテレビに映させたりしているのかと言えば、尖閣危機を口実に宮古島や石垣島に自衛隊基地を新設しようとしている自衛隊が、何やら頼りになる存在であるかに地元に印象づけようとする稚拙なデモンストレーションのためでしかない。

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