「はぁ~」とつく “ため息”は身体に良くないってホント?

2016.02.24
by Mocosuku
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「いつ、どのようにため息をつくべきかを脳に指示している神経構造が特定された」と、英科学誌『ネイチャー』に発表した米国の研究チーム。

ため息が身体の健康維持のために不可欠な生物学的プロセスだと論じています。脳内ではため息は神経活動を刺激し、行動の変化を伝え、呼吸の速さをリセットする役割があり、呼吸器系では、ため息は気道をきれいにし、肺が酸素を取り入れるのを助けるとのこと。

ため息が多過ぎても少な過ぎても神経疾患につながる場合があると、このチームは指摘しています。

呼気としての「ため息」

ため息の意味を辞書で調べると、「気苦労や失望などから、また、感動した時や緊張が解けた時に、思わず出る大きな吐息」(goo辞典)とあります。

ため息はガッカリした時にするものというイメージがありますが、感動や緊張の解けた時などにも出ると指摘されています。

もう一つ、ため息の意味として「吐息」とされていること。呼吸には吸うことと(吸気)と、吐く(呼気)とがありますが、ため息では呼気が強調されています。

「ため息」を、呼気を中心とした呼吸法とみなしてみると、嘆きの表現という文学的な意味よりも、健康増進の呼吸法という新しい意味が見えてきます。

リラックス法としての呼吸法;呼吸と自律神経

自律神経は、交感神経と副交感神経の二つの神経からできています。

交感神経は、昼間活動や緊張、ストレスといったときに優位に働いています。一方副交感神経は、休息やリラックス状態のとき、特に夜間や睡眠中に優位になります。

ストレスの多い現代、どうしても交感神経優位の状態が続いてしまいます。

自律神経は自分の意思とは関係なく働いています。それをコントロールするために、ときどき意識して副交感神経を働かせる必要があります。

そのためには、吐く息をできるだけ長くすると、副交感神経が優位となり、血流がよくなって、筋肉が緩み体をリラックスさせることができます。

お腹をへこませるほど息を吐く腹式呼吸です。呼吸は息を吸うことよりも吐くことに意識を向け、長く吐くと自然に息は吸えますので、息を吸うことは意識しなくてもいいのです。

アメリカチームの研究について

冒頭の英科学誌『ネイチャー』に発表した米国研究者チームは、ため息の効用を、実験によって検証しています。

ラットの脳細胞で1万9000以上の遺伝子発現を調べ、2つの特別な神経ペプチド(アミノ酸結合物)を生成している神経細胞の2つの束を特定したそうです。

この神経ペプチドは、脳細胞同士の情報交換を可能にする化学物質で、これがため息に関連している可能性があるとのことです。

そして、この神経ペプチドをラットの脳内にある別の神経細胞のかたまりに注入することで、ラットのため息の頻度の変化を検証しています。注入すると通常のペースから急に過多になり、1時間に40回だったものが400回に急増し、この神経ペプチドを取り除くと、ラットはため息を全くしなくなったそうです。

ため息はしなくても、しすぎてもよくない

呼気をしっかりとする「ため息」は、空気を吸い込む「吸気」を促進させます。これによって大脳皮質が活性化すると言われています。

また、肺の内部では「肺胞」と呼ばれる小さな空気の袋が酸素を取り込み、体内の二酸化炭素(CO2)とガス交換をしています。この時、ため息は、しぼんでしまった肺胞を再び膨らませてくれる作用をするとのこと。

一方、不安神経症、睡眠時無呼吸症候群、乳幼児突然死症候群(SIDS)など多くの神経疾患は、不適切な呼吸と関連づけられていて、たとえばパニック障害では、ため息を多くつき過ぎるため、大脳皮質が過剰に刺激され、不眠などの問題につながっている可能性があるという指摘もあります。

ため息はしなくても、しすぎてもいけないということでしょう。

自己治癒力をもつため息。無理に抑えず、有効活用していくとよいということでしょう。上手にため息するコツとは、長く吐ききることです。

ゆっくり深く吐き出すと、緊張が解消され、血液循環がよくなります。窮地に立った時ほど、意識して深く息を吐いてみましょう。

<参考>
ため息につながる脳の化学物質を特定―米研究チーム
ため息でハッピーに!? 自己治癒力・ため息の効果とコツ

執筆者:南部 洋子

監修医:坂本 忍

 

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記事提供:Mocosuku

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