なぜ中国は、チャイナ・マネーで世界を支配できなかったのか?

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無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが「暗殺を恐れる習近平。腐敗一掃で中国共産党の不満分子が爆発寸前」に続きお伝えする、『中国4.0~暴発する中華帝国』(エドワード・ルトワック著)から読み解く中国。前回は「中国の現在と未来」についてでしたが、今回は「チャイナ・マネー」に着目し、金の力を過信しすぎた中国が招いた過ち、そして日本は今後どのような針路を取れば中国の轍を踏まずに済むのか、鋭い視点で分析しています。

「チャイナマネー」の力と限界

全国民必読の書「世界3大戦略家」エドワード・ルトワックさんの『中国4.0~暴発する中華帝国』。3回目読んでいます(笑)。この本は、206ページ。薄いので、すらすら読めてしまうのですが、内容は「濃い」です。さすがは「世界3大戦略家」。

今回は、ルトワックさんの「金力観」について。「金力観」というのは、あまり聞かないと思います。私が今思いついた言葉なので、一般的ではありません。意味は、「金の力について、ルトワックさんは、どう考えているのか?」ということです。

中国は、「チャイナ・マネー」の力を過信しすぎた

中国は、1970年代からリーマンショックが起こった08年まで、「平和的台頭」と称し、世界、特に「アメリカ」から警戒されないよう、細心の注意を払ってきました。ところが、リーマンショックが起こりアメリカが沈んだ。中国は、沈まないどころか9%以上成長し、浮上した。

09年、「100年に1度の大不況」が世界で猛威を振るっていた時、中国は、いくつかの過ちを犯します。その1つが、「金は力なりと錯覚したことである。これ、もちろんルトワックさんの考えです。少し引用してみましょう。

これは中国の知識人たちの犯した、完全な間違いである。

 

要するに「金は力なり」ということであり、これが外交分野で実践
されると「小国のところまで出向いて金を渡せば、相手は黙る」という勘違いにつながる。

 

金がパワーそのものであり、これを渡せば相手はおとなしくなって自分たちに従うだろう、という安易な考えだ。
(27~28p)

こうした中国の考えについて、ルトワックさんは、

誰にも言い訳ができないほどの、ひどい間違いである。
(同上)

と、断言されています。そして、「金で態度が変わらなかった例」として、ミャンマーとアメリカをあげました。

中国は、資金を豊富に与えることによってミャンマーは黙るはずだと勘違いしてしまったし、

 

アメリカに対しても中国の大規模なマーケットをちらつかせれば態度を変えるだろうと見誤っている。
(31p)

日本にも言及しています。

「金は力なり」という幻想を抱いた中国のリーダーたちは、もし北京が日本政府といざこざを起こしたとしても、腐敗した(つまり中国の金に目がくらんだ)日本の財界は自国の政治家に圧力をかけて中国側の要求に屈するはずだ、と勘違いしていた。

 

「金で政治的影響力を買える」という、彼らの典型的な思い違いだ。
(47p)

これって、「金で転ばなかった」安倍総理を褒めているのでしょう?

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