「金は力」である
私は、この部分を読み、本当に「面白い!」と思いました。実際、「金は力」だからです。考えてみてください。なぜ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国などの親米諸国は、アメリカの制止を無視して、中国主導の「AIIB」に入ったのでしょうか? 「金に目が眩んだから」でしょう?
ここ数年、かつての覇権国家イギリスは、「中国の属国」のようにふるまっています。実際、「AIIB」に入るのを決めたのも、「人民元」を「SDR構成通貨」にするのを支持したのも、イギリスが欧州で一番だったのです。イギリスは、「特別な関係」といわれるアメリカを、堂々と裏切って中国側につきました。これだって、「チャイナマネー」の力でしょう?
さらに、中国は、アフリカでも中南米でも影響力を拡大している。これも「徳の力」ではなく、「金の力」です。
しかし、金は「すべて」ではない
とはいえ、「金はすべてではない」のもそのとおりです。たとえば、リベラル系の人たちは、「経済の相互依存を強めることが大事だ。そうすれば、お互い損をするので、対立や紛争はなくなる」と主張します。
実際、ある程度はそのとおりでしょう。しかし、たとえば欧州とロシアの関係をみてください。欧州の国々は、経済的に大きな損失を出しながらロシア制裁を続けています。ロシアも「報復制裁」をしているので、欧州の、特に農業は大きな打撃を受けています。
2010年に「尖閣中国漁船衝突事件」が起こったとき、中国は日本へのレアアース輸出を禁止しました。日本は、とても困りましたが、それで屈することはありませんでした。こういう現象は、「経済の相互依存により、対立、紛争を回避できる」という理論では説明できません。要するに、「金は力」ですが、「金は万能ではない」ということですね。
私たち自身の生活を見てもわかるでしょう。「金」は確かに超重要なファクターですが、それですべてが決定されるわけではありません。
正しい「金力観」が大切
「金力」を過信したのは、中国だけではありません。日本だってバブル時代は、そういう傾向がありました。
態度の横柄な「成金」が尊敬されないのは、日本だけではありません。ロシアでも、プーチンが支持されたのは、90年代政財界を牛耳っていた新興財閥を国民が憎んでいたからです。
日本も、ルトワックさんの本を読み、「正しい金力観」を身につけることが大事ですね。世界から愛され尊敬され、繁栄する国家をつくるために。まだの方は、是非ご一読ください。
image by: Drop of Light / Shutterstock.com
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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