【パナマ文書】日本政府がタックスヘイブン対策に消極的な理由

 

多国籍企業や富豪たちはコンサルタント会社に依頼し、収入に比べて少ない税金ですむよう、タックスヘイブンの利用をせっせとやっているが、タックスヘイブンとは無縁の一般市民は、ささやかな収入の中から、どうやって税金をねん出しようかと苦しんでいる。

大金持ちの企業や個人がふつうに納税してくれれば、庶民はもっと楽ができる。社会保障の予算が削られ、負担ばかりが増し、そのうえリーマンショックの時のように、投資銀行の失敗の尻拭いまでさせられては、たまったものではない。

むろん、各国の税務当局も黙って見逃しているわけではあるまい。日本にはタックスへイブン対策税制があり、「税負担が日本の法人税に比べて著しく低い外国子会社の留保所得」に対し、株式所有割合に応じて日本の株主の所得とみなし合算して日本で課税することになっている。

しかし、これではとても十分な対策とはいえない。留保所得に課税するのであって、配当に課税するのではない。留保所得をつかむのさえ、タックスヘイブンの銀行が秘密主義である以上、難しいにちがいない。

節税でも脱税でもなく、いわばグレーゾーンにある租税回避は、いまやグローバル資本主義になくてはならないものとして組み込まれている。それだけに、各国政府としても、税収奪還を厳しくやれば世界経済戦争にのぞむ自国の企業に不利というジレンマに悩んでいるのが実情だろう。

昨年8月13日の日経新聞にこんな記事が載った。

経済協力開発機構(OECD)とG20に加盟する合わせて40カ国余りが、租税回避地(タックスヘイブン)を使った企業の過度な節税策を防ぐ税制を全面導入する見通しとなった。日米英などの主要国が採用している課税の仕組みを、インドやオランダなどの10カ国以上が導入する。税率の違いを突く節税策を防ぐ国際的な取り組みの抜け穴をふさぐ狙いだ。

けっして十分とはいえない日米英のタックスへイブン対策税制の仕組みを他国が真似して、どれほどの効果があるのだろうか。

そもそも、タックスヘイブンがここまで勢力を持つようになった源流は、イギリスの国策にあった。ケイマン、バージン、バミューダ諸島、アイルランド、ドバイ、香港など旧英国領に多いのはその証拠だ。

英国は第2次大戦後、国力の復活をかけて米国ウオール街の資金を呼び込むため、ロンドン(シティ)をオフショア金融市場とする政策を採ったことがある。その後、英仏海峡、カリブ海、アジア地域の領土や旧植民地の支配から手を引きながらも、現地議会への英金融界の影響力を保持し、シティに代わるタックスヘイブンに衣替えさせていったのだ。

大ざっぱな言い方をすれば、英国が建てたタックスヘイブンを舞台に米ヘッジファンドなどが金融テクノロジーを駆使して、相場を大きく揺るがせている構図だ。

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