問題は、ギリシアが決して返せない対外債務55兆円の処理
問題は、対外債務です。ユーロやドル建てのままなら、新ドラクマで、対外的には縮小するギリシアの経済に対し、対外債務が3倍に大きくなることです。現在でも払えないのに、3倍になった対外負債をギリシアが払えるわけもない。
破産した企業への、銀行の貸付金と同じです。貸付金は100億円でも、その実質価値は、不動産担保など回収できる30億円などの価値しかない。
ドイツとIMFが中心になる債権者団は、対ギリシア貸付(55兆円)を70%ヘアカットして、17兆円に減らす必要に迫られるでしょう。38兆円の損失が、ドイツ、ドイツの銀行、ECB、IMFなどに生じます。ここが、ギリシアの債務問題の、最終的な、着地点でしょう。
ただしドイツは、こうならないように、ELA(緊急流動性支援)を通じて、ギリシアの銀行への、不足するユーロの融資を、続ける予定と言っています。
ギリシアのチプラス首相は、損をしたくないドイツの思惑を見透かすように、「ギリシアが破産し、ユーロを抜けたとき困るのは、債権者だろう」という発言をしています。
古い諺(ことわざ)に、「窮鼠(きゅうそ)猫をかむ」とありますが、追い詰められたギリシアが、大きなドイツに反逆しています。
ロシアのプーチン大統領は、「数千億円の負債なら困るのは債務者だ。しかし、10兆円となると困るのは債権者だ。心配いらない。がんばれ」と、左派のチプラス首相を励ましています。
7月5日の国民投票
「財政の緊縮策」の受け入れか拒否かを決めるための国民投票は、7月5日です。VAT(付加価値税)の引き上げ、年金のカット、公務員の削減が含まれます。緊縮策は、国民の生活レベルを下げます。
緊縮策を受け入れない場合、ギリシアへの資金援助はなくなり、支払期限が来る債務から順にデフォルトしてゆきます。デフォルトは、貸し手にとっては返済期限の延期と同じです。追い貸することとも、同じです。(注)ただし、ギリシアの規定では、国民投票の結果は、法的な拘束力をもちません。政権の支持率のようなものにすぎないのです。しかし、世界は、この結果を無視はできません。
ギリシア政府は、6月30日の対IMFのようなデフォルトを続けるつもりに見えます。相手の多くは、現在、ユーロの公的な金融機関になっているからです。
企業と国家では、デフォルトの結果が違う
返済ができないため企業が倒産すれば、仕入もできず給料も払えず社員も去って、残っていた資産は債権者に接収され、社員も去って、跡形なく消えます。しかしギリシアという国家は、戦争で占領されない限り、なくなりません。
ギリシアの意思では、おそらくユーロからは離脱しない。一方、ユーロ側(債権国)には、ギリシアを、強制的に離脱させる手段はないのです。
非現実に仮定的なことですが、韓国が自国通貨として円を採用した場合、日本には拒絶する手段がない。日本が万一、米ドルを自国通貨とした場合、米国にもやめさせる手段はありません。