真田丸『第22話』解説。北条家は秀吉に「勝つ」ためにどんな準備をした?

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NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は秀吉軍の来寇に備えて北条家側が行った準備について。城の強化、食料の備蓄、弾薬の調達はもちろんのこと、「政策」を領内に文書で通達し、領民たちの士気もアップさせていたとか。さっそく見ていきましょう!

今回のワンポイント解説(6月5日)

今回のワンポイントは、秀吉の来寇に備えた北条家側の準備について。前々回説明したように天正14年以降、北条家では何度か、秀吉軍の来寇が避けられないものと見て、防戦の準備をしている。

まず、領国全体での支城配置を見直して、秀吉軍をうまく迎撃できるようにシフトを敷き、戦略的に重要な城を大幅に強化した。小田原城や岩付城に惣構が造られたのも、氏照の本拠が滝山城から八王子城へと移転したのも、この時のことだ。もちろん、城内へ食料を運び込んだり、鉄砲の弾薬を大量に確保したり、といった備蓄も進めている。

さらに、領民のうちの成人男子を帳簿に記載させるとともに、もよりの城に集めて軍事教練を受けさせてしている。こうした政策を文書によって領内一円に通達するところはいかにも北条家らしく、ある意味で非常に近代的といえる。そうした領民に、「武者っぽく仕度して来い」と文書で命じていることから、東国の大名は戦国の終わり頃になっても、農民兵を主体にした軍隊で戦っていた、とか主張する人があとを絶たないのだけれど、それは全くの間違いだ。領民を動員するのは、未曾有の大戦争に備えて不足しがちな兵力を補うためであって、精鋭部隊はちゃんと別にいるのである。 

北条家がこの時期、領内に出した動員関係の文書を見てゆくと、「御国御用」「天下之御弓箭」 のような表現が目立つ。国家存亡の危機だから領民たちも御国のために働け、というわけで、何だか大戦中の日本や某北の国みたいだ。実際、弾薬を鋳造するため、寺院に梵鐘を供出させた例すらある。まあ、このあたりの話を詳しく知りたい人は、僕の『戦国の軍隊』(学研パブリッシング 2012)や、新刊の『復元イラストで見る「東国の城」の進化と歴史』(河出書房新社)を読んでね。 (西股総生)

今週のワンポイントイラスト

ハンコ待ちの文書の束。氏直の戦いは既に始まっている…!(みかめ)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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第一部:小田原城のウラサンポ。解説:西股総生 

第二部:居酒屋「北條水軍」にて、西股先生を囲んで北条トーク。

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第2部「戦国軍事考証 vs 歴女」 西股総生×磯部深雪×みかめゆきよみで「あのドラマ」を語ります。

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