ソニーのVR、任天堂のAR。「次世代」を支えるゲームエンジン最前線

2016.07.20
by sakky(まぐまぐ編集部)
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VR(仮想現実)とAR(拡張現実)が話題です。

『PlayStation VR』を始めとしたゲームだけでなく、アトラクション施設などにも取り入れられつつあるVR。VR元年とも呼ばれ、ITトレンドの主役はVRだと思いきや、7月に『ポケモンGO』がリリースされるやいなや、一気に世界の主役に躍り出たAR。

今後は、こういった次世代ゲームのコンテンツ開発競争もおきてくることでしょう。

そんな中、VR映像を制作するのにゲームエンジンが用いられているという話を耳に。そこで、ゲームエンジンで世界3本の指に入るシェアを持つUnreal Engine(アンリアルエンジン)を開発・販売しているエピック・ゲームズ・ジャパン。同社の代表で東京デザインテクノロジーセンター専門学校にて講義をしたことのある河﨑 高之氏に、VRやAR、ゲームの未来について聞いてきました。

VRの先にあるARを見据えて、今、参入しなければならない

――エピックゲームズ社のゲームエンジン「アンリアルエンジン(以下・UE)」でVR動画が制作されているという話を聞きました。今後、VRは広がっていくと思いますか。

河﨑 高之氏(以下・河﨑)今あるVRの機器は、まだまだ生まれたばかりのデバイスで、将来、ARに繋がっていく第一歩だと思っています。私自身は、ARというのはグーテンベルクの印刷機、火薬、原子力などに匹敵する、人類の文明を変えうるものだと思っています。その意味でのARはまだ先。ただ、今あるVR、MR(複合現実)が発展して繋がっていくと思います。

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エピック・ゲームズ・ジャパン 河﨑 高之氏

ですが、だからといって何もしなくていいというわけでなく、今、VRを研究するなどして入場券を買っておかないと、5年後なのか10年後なのかわかりませんが、大きな流れから取り残されてしまうのは確実だと思います。

――ARというと『ポケモンGO』が話題となっていますが、川﨑さんが描くARの未来とはどんなものでしょうか。

河﨑:『ポケモンGO』はMRですね。私が思うARは、眼鏡かコンタクトレンズ型で、例えば文章を読む時、英語が書いてあったら、そこに日本語が表示される、というレベルのもの。眼鏡がモニターの役割をし、モーションセンサーで机の上のなにもないところでキーボードが打て、マウスが操作できるようになれば、PCもモニターもマウスもキーボードもいらない。というところまで含めてのARですね。

VRは表示デバイスなので、あくまでモニターにすぎない。現実世界とリンクできるかというところで、単なるMRでなく、ARまでいけば、社会インフラとしてビジネスチャンスが広がるかなと思っています。5年位で行くんじゃないかと思います。その未来のために、我々はこのゲームエンジンをアップデートし続けます。

ゲームエンジンはプレゼン資料の時のパワーポイント

――そもそも、ゲームエンジンとはどういうものなのでしょうか。

河﨑:ゲームエンジンを何かに例えると、文章作成の時のワープロソフト、プレゼン資料の時のパワーポイントというのがわかりやすいですね。

パワーポイントなしでプレゼン資料を作ろうとすると、グラフを手書きしたり、写真を撮って切り貼りしたりと大変。しかしパワーポイントを使えば、決まったボタンを押すだけで、決まった機能を呼び出せますよね。ゲームエンジンも同じ役割です。

色んなジャンル、タイトルのゲームがありますが、見かけはバラバラに見えても、実は根幹になる部分はかなり共通していることが多いんです。そうした共通する部分を、毎回いちから作るよりも、ゲームエンジンという形でパッケージングすることで、次に作る時は同じものを共通して使えるというのがコンセプトですね。

――エピックゲームズ社のUEは、どんな特徴をもっているのでしょうか。

河﨑:最新版のUE4に関しては、描写力・表現力が他のエンジンより優れていると自負しています。そしてブループリントという機能も強みです。

ブループリント

ブループリント(エピック・ゲームズ・ジャパンHPより)

これは、プログラムを絵で表した箱と箱をつなぐことでロジックを組むことができるもので、この機能を使えば、プログラム、コードが書けない人でもゲームを作ることができるんです。

――こうした強みがあるから、『鉄拳7』や『ファイナルファンタジーVII リメイク』など、すでにゲームエンジンを持っている他社からも、UEが採用されているんですね。

河﨑:ゲームの制作費というのは年々高騰していて、PS2の時は2、3億円あればかなり大規模なタイトルができていました。しかしPS4で同じボリュームのものを作ろうとしたら、最低でも20、30億円かかってしまう。でも、売上は下がっている。どうやって商売として成立させるかと言ったら、効率を上げるしかない。そこでUEを選んでいただいていると思います。

そして最近では、ゲーム以外の場所で使っていただくことも。ドラマ『DEATH NOTE(デスノート)』で死神CGキャラクターを動かすのにUEが採用されるなど、CG映像や映画、建築やモデルルーム、家具、車の設計、医療分野のシミュレーションなどにも使っていただいています。

スマホでゲームの未来は明るい

――コンシューマーゲームの市場は年々縮小していますが、UEの活躍の場は広がっていくんですね。

河﨑:据え置き型ゲーム機だけに限れば縮小するかもしれませんが、ゲーム自体が縮小するわけではありません。ゲームをやって遊びたいという欲求は変わらない。遊ぶデバイスや場所やシチュエーションが変わるだけであって、その時々によって最適なデバイスが出来てくるだけです。

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日本だと、現在はスマホゲームですね。日本では2Dでカジュアルな可愛い絵柄のゲームが主流ですが、海外、中でも韓国ではUEで作られたスマホ向けのリッチコンテンツが多く開発されています。

――UEはスマホゲームにも互換性があるんですね。

河﨑:そしてスマホ自体のパフォーマンスは、今後確実に上がっていくでしょう。すでにPS2は超えています。そして過去のゲームのコンソールの歴史を見ていけば、ハードの性能が上がれば、コンテンツがリッチになるということは確実に法則としてあるので、最終的には今のコンソールと変わらないクオリティのゲームが求められるのは確実だと思います。

――しかもスマホなら、持っている人も多い。

河﨑:PS2が市場で一番売れたプラットフォームで、約1億5千万台。ただスマホは世界中で数十億台あるわけですよね。

近い将来、Xbox OneやPS3。PS4に匹敵するスマホが出てくると思うと、ゲームを作る側、コンテンツを作る側からすると、過去にないくらいのプラットフォームが広がっているということ。そこにコンテンツを出していける時代がくるので、エンタメビジネスとしての間口は、これまでにないくらい広がっています。チャンスは確実に広がっているんです。

――なるほど、たしかに未来は明るそうですね。それにゲームだけでなく、映像、建築、医療と活かされる職種が多くなっているわけですね。

河﨑:いろんなエンターテインメントのあり方がある中で、UEは色々な表現方法、表現先のデバイスをつなぐ根幹になるようなデバイスなので、その中でUEを勉強しておけば、色々な状況の変化に対応できるスキルが身につくと思います。

UEを学ぶことで活躍の場が広がる

――今後さらにUEが活躍の場を増やしていきそうですね。それに伴いUEを使える人材も必要となってきますね。

河﨑:私のところにもUEを使える人材を探しているという連絡が毎日のように来ます。UEが使える人材の求人は凄く多いです。学生なら、勉強して使えるようになることで、現場に入ってからの大きなものとして、他の学生との差別化する要素としてはものすごく大きな武器になると思いますよ。

東京デザインテクノロジーセンター専門学校さんでは、UE3の頃からカリキュラム導入いただいています。求人は確実にあり、業界側としてもUEを使える即戦力を世に送り出していただきたい。卒業制作でUEを使って頂いている事例もありますので、エピックゲームズとしてもお手伝いしていければと思います。

――実際に講師としても学生へ講義したことがあるそうですが、学生と触れ合った印象はいかがですか。

河﨑:熱意があって前のめりに話を聞いてくれるのが印象的でした。専門学校の学生さんは熱意がありますね。大学に行って講義をすることもあるのですが、専門学校のほうが目的がはっきりしているからか、熱意が感じられました。

好きなことを仕事にする厳しさも学ぶ

インタビュー終了後、河﨑氏は、東京ゲームショウに出展すべくゲームを制作している学生たちの元へ行き、ゲームの中でのライトの当て方や、ゲーム性についてなどアドバイスを行っていました。

褒めるだけでなく、厳しいコメントを投げかける場面もあり、学生たちは真剣に耳を傾けていたのが印象的でした。

好きなことを仕事にするというと聞こえは良いですが、実際に仕事にした時の辛さや難しさなどを、学生の内から、現場で働いている人の口から聴けるというのは凄く貴重な体験ですよね。

こうした企業プロジェクトを盛んに行ない、プロの意見を聴くことができるというのは、専門学校ならではでしょう。

東京デザインテクノロジーセンター専門学校では、エピックゲームズや、AppBankなどの企業と、産学協同プロジェクトを活発に行なっています。企業からの課題を理解し、実践することで、プロとして必要な考え、力が身についていくことでしょう。

さらに、高校生向けに、エピック・ゲームズ・ジャパンの体験実習型特別講義や、GMOインターネットの会社見学会、ガンホーの特別講義なども開催しています。

ゲームの仕事に就きたい、子供の進路に悩んでいる親御さんたちは、一度こうしたイベントに参加してみてはいかがでしょうか。河﨑氏が感じる、熱意を感じ取れることでしょう。

syousai

PR:東京デザインテクノロジーセンター専門学校

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