これだから日本は「韓国よりロシアを下に扱う」という過ちを犯す

kitano20161031
 

12月に訪日が予定されているロシアのプーチン大統領ですが、ここにきて両政府の「平和条約交渉」と「経済協力」に対しての考え方の違いが浮き彫りになってきたようです。これを受け、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、日本は、ロシアが日本との関係よりも中国との関係を重視していることを認識し、北方領土問題を棚上げにしてでもロシアを味方につけることが大切だと述べています。

日本の大悲劇=◯◯観と◯◯観のなさ

プーチン訪日が近づいていますが、「日ロの交渉は難航している」という情報が出ています。これに関連して最近、「ロシアは何を考えているのでしょうか?」といろいろなメディアから質問を受けます。テレビ局、新聞、雑誌。今回もメルマガで、「ロシア側が何を考えているのか」について書きます。

こういう話をすると必ず、「北野さん、あなたは間違っている!」と批判のメールがきます。「ではなく、「ロシア側の考えをそのまま伝えるだけですので、批判メールを送らないよう、お願いいたします。

ロシアは、「平和条約締結」を急いでいない

毎日新聞、10月30日付を見てみましょう。

<日露交渉>すれ違い 平和条約の調整難航

毎日新聞10/30(日)8:00配信

 

12月15日に山口県で開かれる日露首脳会談を前に、日露両政府の平和条約交渉と経済協力をめぐる思惑の違いが浮き彫りになってきた。

 

安倍晋三首相は両者を同時に前進させたい考えだが、ロシアは極東での経済協力プランの規模を独自に発表し、プーチン大統領も早期の平和条約締結をけん制した。

 

日露の溝は埋まっておらず、調整は難航しそうだ。【前田洋平】

日ロの溝は埋まっていないそうです。もう少し、具体的な話を。

「平和条約がない異常な状態に1日も早くピリオドを打たなければならない。今を生きる世代として問題を解決する強い決意で臨みたい」。

 

安倍首相は17日の衆院環太平洋パートナーシップ協定(TPP)特別委員会で語った。北方領土問題を前進させれば「政権最大のレガシー(政治的遺産)」となるのが確実だ。

 

国会答弁で強い意欲を繰り返すのも、ロシア側にサインを送る狙いからだ
(同上)。

 

平和条約がない異常な状態に1日も早くピリオドを打たなければならない」。

これなんですが、日ロの温度差は大きいようです。ロシア側も確かに「平和条約がないのは異常な状態」という認識。しかし、「1日も早く」とは考えていません。

この安倍総理の発言。ロシア側には、「1日も早く平和条約を締結したい!」と、そのまま聞こえないのです。そうではなく、「1日も早く北方4島を返しやがれ!」と聞こえる。そして、実際安倍総理の真意は、「平和条約を結びたい」のではないでしょう? 「島を返しやがれ!」ということでしょう。日本にとっては当然の主張ですが。

ところがロシア側は、「北方4島は、ロシア(ソ連)が戦争に勝って獲得した土地。なんで返さんといかんの?」と考えている。「日本だって、日ロ戦争に勝って、南樺太を奪ったではないか?」「日本が勝ったときは、ロシアの領土を奪い、日本が負けたときは『固有の領土だから返せ』というのはフェアじゃない」と考えている。そして、4島を実効支配しているロシアからすると、2島返還、4島返還いずれも「大損」ですから、「それ相応の見返りがなければ返還なんかするか!」と、こういう意識なわけです。

大戦略家ルトワックさんは、「自分に都合のいい相手国を発明するな!」といいます。日本の認識は、「ロシアも島を返したがっている」というものでしょう? これは、完全に「発明」です。日本だって、第2次大戦が終わるまで「1875年の樺太・千島交換条約で、『樺太はロシア領』『千島は日本領』と決まった。わが国は日ロ戦争で勝利して、ロシアから『南樺太』を奪ったが、もともと二国間条約で『ロシア領』と決まったのだから、『返還してあげよう』」などと考えたことがあったでしょうか? もちろん、ありません。

「日清戦争の結果、台湾は日本領になった。しかし、清がかわいそうだから、台湾は返してあげよう!」とは、もちろん考えませんでした。日本が「夢にも」思わなかったのに、ロシアが「無料で返してくれる」と考えるのは、まさに「発明」です。

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