失速?ユニクロ「値上げ」は計算通り、消費者は再び挑発されている

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今まで「誰にでも着られるデザインで、しかも安い」というコンセプトで支持を集めてきたユニクロ。そのユニクロが失速し始めたのは2015年のことでした。経済などの専門家は「値上げ」が最も大きな原因であるとの見方を示しましたが、メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、ユニクロの値上げは計画的に行われているものであり、逆にアパレル業界や消費者を試しているのだと指摘。さらに、9月30日から発売が開始された新ライン「Uniqro U」などの実例を挙げて詳しく解説しています。

Uniqro U の挑発

1.脱低価格路線は「+J」から続いている

2015年秋冬商戦でユニクロは失速した。15年9~11月期(第1四半期)決算で、国内ユニクロ事業の営業利益が448億円と、前年同期を12.4%下回った

マスコミ等では、その原因を「値上げ」にあるとした。ユニクロは14年、円安による原材料価格昇、生産国における人件費の上昇をカバーするために秋冬商品を平均5%値上げした。それにより、14年11、12月、15年2、3月において客数が前年割れした。

更に、15年の秋冬商品も平均10%値上げした。2年連続での値上げとなり、割高感はより一層強まり、売上不振を招いたとされたのだ。

しかし、2016年春夏には復調する。2016年3~5月期の連結決算では、売上収益が4229億円で前年同期比6.2%増、営業利益464億円で18.6%増となった。国内ユニクロ事業も増収増益となった。

私は、原材料と工賃が上がったのだからユニクロが値上げしたのは当然だと思っている。むしろ、原価が上がっているのに、小売価格に反映できない競合他社が異常だ。

マスコミや評論家は店頭売上実績を見て、いろいろ言い立てるのだが、それはあまりにも近視眼的である。アパレルは、企画生産のサイクルで見なければならない。店頭に商品が並ぶ半年前には、商品企画は終了しており、その半年前には素材企画が終了している。つまり、一年前から店頭設計は始まっているのだ。

私は、ユニクロの脱低価格戦略はジル・サンダーとのコラボ+Jからスタートしていると思う。「+J」が発売されたのが2009年秋なので、素材開発を含めると、少なくとも2年前から企画はスタートしていただろう。

「+J」の時には、取引先のテキスタイル部隊とジル・サンダーによる素材ディレクション及びデザインディレクションが主であった。

勿論、優秀な縫製工場を使っていたが、まだ少数であり、フルアイテム構成できるだけの布陣はできなかった。

「+J」は2011年秋まで続いたのだから、最初から3年計画だったのだと思う。「+J」を失敗と見る向きもあるが、私はそうは思わない。あれは、ユニクロが自らのレベルアップのために計画的に投資したのだと思う。

2011年はH&Mの失速が明らかになった年でもある。ユニクロは、脱低価格戦略が正しいことを確信したに違いない。そして、すぐにジル・サンダーの後継を探したはずだ。

ユニクロ アンド ルメール」が発売されたのが2015年10月だから、遅くとも2015年の春にはコレクションが完成していたはずで、素材開発を含めると、最低でも1年間の準備は必要なので、2014年春には始動していたと思われる。

ルメールは、2010年から2014年秋までエルメスのディレクターアーティスティックに就任していたことを考えると、多分、最後のコレクションを作っている時に、ユニクロとの交渉も行い、半年は重複した作業をしていたと思う。

ユニクロの戦略は一貫しているし、実に計画的である。一時的に売上や利益が落ちたからと言って、価格を上げるとか下げるとかいう短期的な判断だけで動いたわけではないのだ。

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