2.アンチユニクロの実験
「+J」「Uniqro U」では、既存のユニクロビジネスとは正反対のアプローチを行っている。ユニクロは自ら、アンチユニクロの実験を行っているのである。
レギュラーのユニクロでは、厳しい原価管理を行っているはずである。徹底的に無駄を排除し、いかにコストダウンできるかを考える。そして、様々な計数分析を行い、いかにリスクを軽減するかを科学的に考えているはずだ。
しかし、こうしたアプローチからは革新的な商品は生まれない。通常のファストファッションは、ラグジュアリーブランドのコレクションをベースにトレンド分析を行い、商品企画を決めているが、ユニクロのようなベーシック中心の商品MDではラグジュアリーブランドのコレクションをコピーすることは意味がない。
むしろ、ラグジュアリーブランドのデザイナーにユニクロのコンセプトに基づいた商品を作らせ、そのエッセンスをレギュラー部隊で応用した方が合理的である。
現在、ラグジュアリーブランドのトレンドは、「ノームコア(究極の普通)」から「タッキー(悪趣味な)」へ、「シンプル」から「デコラティブ」へと移行している。
しかし、ユニクロの商品は最初からシンプルであり、ノームコアに近い。
そこで、ルメールは、正面から見たら何でもない普通の服だが、見えない部分を徹底的に作り込むコレクションを作り上げた。
また、これまでのユニクロのような合繊中心の軽量で高機能の素材ではなく、天然素材でヘビーウエイトなものを選んでいる。
あるいは、手縫いで仕上げる、ダブルフェイスの完全リバーシブル仕立てのジャケット、コートをさりげなくコレクションに加えている。
ニットでは、大変効率の悪いミラノリブの総減らしの製品を出している。しかも、全てはレギュラーのユニクロの価格帯に収めているのだ。
それでも高いという意見があるが、私から見たら原価で販売しているに等しいのである。
つまり、全ては実験なのだ。売る商品を作っているのではなく、売る商品を作るためのリソースとなるような商品を仕込んでいるのである。