3.既存アパレル、消費者への挑発
今回の「Uniqro U」のコレクションは、一般の大手アパレルでは作り得ない商品を展開している。
まず、これだけ高度なデザインができるデザイナーが存在しない。また、これだけ高度なパターンが引けるパターンナーが存在しない。
これだけの素材開発ができるテキスタイルディレクターが存在しないし、これだけ高度な縫製技術を持つ縫製、ニッター、テキスタイルメーカー、丸編みメーカー等とのネットワークを持っていない。
仮に、同じ商品ができたとしても、多分、価格が2倍から3倍になってしまうだろう。
私には、ユニクロが既存のアパレルに対して、挑戦状を叩きつけているように見えて仕方がない。これだけの服が作れるのか、と。
しかし、悲しいことに、大手アパレルの社員には、ユニクロの商品を分析できる専門家もいない。挑発にも気がついていないと思うし、最初から諦めているのかもしれない。
ユニクロが挑発しているのは既存アパレルだけではない。消費者をも挑発しているように感じるのだ。
「Uniqro U」は、非常に高度で手間の掛かる服を通常の服と同じ価格で販売している。洋服が分かる人が見れば、大騒ぎになるはずだが、分からない人が見れば、単に重くて嵩張る服だと思うだろう。
ユニクロは消費者を試している。消費者が支持しなければ、消費者のレベルがそこまでだということだ。そうなれば、「Uniqro U」の店頭販売は中止になるかもしれない。
価格を再設定し、独立した店舗で展開するか、ネットだけで販売するかもしれない。
あるいは、「Uniqro U」の計画は既に出来上がっていて、期間限定のブランドかもしれないし、定期的にデザイナーが交代するのかもしれない。
ユニクロは戦略的であり、したたかである。
着々と進化するためのトレーニングを重ねているのである。
image by: humphery / Shutterstock.com
『j-fashion journal』より一部抜粋
著者/坂口昌章(シナジープランニング代表)
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